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No119 高病原性新型鳥インフルエンザウイルス

 H5N1高病原性鳥インフルエンザウイルスのヒトへの感染が知られ、これが世界的大流行(パンデミック、pandemicの“pan”は「汎」のこと。広く行き渡るさま)になるのではないかと懸念されている。世界保健機関(WHO、World Health Organization)事務局長が「パンデミックはいつか起こり得る、それは明日かもしれない。世界の備えが必要」と警告したのは2004年のことである。ベトナムやタイでヒトへの感染が起きたのがきっかけで、その後再びベトナム、ヨーロッパから中東、更にインドネシア、北スマトラでヒトへの感染が起こったという。幸いにこれまでは全世界に広がるパンデミックにならずに済んでいる。
 ウイルスは細菌とは違い、それ自体は生きている細胞ではない。ウイルスは細胞の核酸(RNAやDNA)の中に取り込まれ、増えてゆく。細菌を通過させない素焼きの濾過器をも通過してしまう程小さく、通常の光学顕微鏡では見ることができない。H5N1とはウイルスの遺伝子の型である。これが時々変異するので、エイズの原因であるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)も変異し易く、なかなか退治できない。本来ヒトは鳥型インフルエンザウイルスでは発病しなかったものが、発病するような事態になるのはウイルスの遺伝子変異による。H5N1はその変異を表している株の名前である。これがヒトに感染して、強い病原性を持つということである。だから、大部分の人間はこのウイルスに対する免疫を持っていないので、感染が始まると拡大し易いということになる。麻疹やお多福風邪(流行性耳下腺炎)は一度罹ると、再度発病しないのは、それらのウイルスに対する免疫を獲得するからである。新型ウイルスによるインフルエンザはパンデミックになるかも知れないが、何年の何月には必ず起こるということを言い当てることはできない。新型ウイルスが出たからといって、それに対応できるワクチンの開発が出来ても、全国民・全人類にゆき渡らせるのは困難である。ウイルスそのものをやっつける抗ウイルス薬の開発も行なわれている。お金を含めてこれらの研究・開発の支援をすることは政府だけの問題ではなく、国民的そして人類の課題ではなかろうか。(IS
(参考:日本医師会雑誌 第137巻・第10号/平成21年1月 特集 新型インフルエンザ・パンデミック−予測と対策)


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(No119n;2009/05/01)


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