医療教育情報センター

No122 新型インフルエンザ ―その後―

 今回の新型インフルエンザについてWHOがメキシコでの発生を発表したのは4月24日であった。30日には警戒レベルを「フェーズ5」とし、6月11日には最高度の「フェーズ6」へ引き上げた。しかし警戒レベルといってもこの基準は、パンデミック(世界的流行)ということで、病気の重症度ではない。WHOも今回の新型インフルエンザについては、@多くは症状が軽く、回復も早い、A感染者は若年者に多い、B重症者の多くは30〜50歳の者や、糖尿病、喘息な基礎疾患のある者、と発表している。
 厚労省も「フェーズ6」と言っても複数の地域で持続的に感染が起こっていることを意味するのであって、ウイルスの深酷度が増したのではない、と言っている。しかし今回の警戒レベルの引き上げは、海外から継続してウイルスが入ってくる可能性が高いこと、さらに秋から第2波の感染拡大の可能性があることを意味している。
 わが国では5月9日に初の患者が成田空港の検疫で確認され、16日には海外渡航歴のない神戸市の高校生で感染したことが初めて確認された。現場での適切な対応をした神戸市医師会・川島龍一会長によると、5月初旬頃から神戸では小児科を中心に「この時期にしてはA型インフルエンザが多い」「ある年齢層(高校生)に偏って患者が発生している」という情報で注意していたという。本来なら海外渡航暦もないのだから検査はしない患者なのに、同じ運動部の部員がA型インフルエンザを発病していたことを知って精密な検査を依頼したところ新型インフルエンザと分かったという。
 今回の新型インフルエンザは通常の季節型インフルエンザAソ連型と同じH1N1型で、アメリカの研究チームによる遺伝子解析の結果、ヒトとトリ、2種類のブタ、計4種類のウイルスが混合しており、1998年に北米で流行した豚ウイルスに別系統のアジア・ヨーロッパの豚ウイルスが加わって誕生したらしいという。
 わが国では神戸に次いで大阪でも5月17日に新型インフルエンザ患者が発生した。神戸と大阪のウイルスの遺伝子配列はよく似ており感染ルートが同一である可能性が高いが、神戸市と大阪府の患者の間には接点を示唆する情報はないという。以後、全国へと広がりをみせているが、6月16日現在、わが国の累計は628人で、兵庫、大阪が多く、千葉、福岡、東京の順になっている。
 症状は季節性のインフルエンザと似ているが、特徴的なのはこれに加えて下痢、腹痛、結膜炎を伴う患者が見られることである。今後予想される状況としては、本格的な冬になる南半球で感染拡大の可能性が高く、北半球では一旦収まっても感染者の流入は続くわけであるから、北半球のインフルエンザの流行は従来より早くなる可能性があると警告する研究者もいる。またヒトの間で感染を繰り返すうちインフルエンザウイルスが変異を起こして病原性を強くする可能性も懸念される。今後の動向をよく注意しながらその都度対応をしていかなければならないだろう。当分は目を離せない新型インフルエンザである。(NH


新型インフルエンザ  ブタインフルエンザ  警戒レベル  WHO  ウイルスの遺伝子解析
(No122n;2009/07/13)


医療ニュース・バックナンバー