医療教育情報センター

No123 臨床研修制度の見直し

 2004年度から始まった医師の臨床研修制度の影響で、大学病院で研修する医師が減少、大都市などの病院などを選ぶ傾向が強まり、大学での人材不足やへき地の医師不足が起きているとして、全国の大学でつくる「全国医学部長病院長会議」は2005年6月、厚生労働省や文部科学省に対し、研修制度の見直しなどを要望した。同時に全国自治体病院協議会も厚労省などに医師不足や偏在の解消を要望した。
 これを受けて厚生労働省と文部科学省は合同で「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」を2008年9月立ち上げ、数回にわたり検討してきたが、2009年2月見直し案を公表した。
 見直し案は3つの柱から成る。1)研修期間を実質的に1年に短縮する。2)必修研修科目を8科目から3科目に減らし、内科(6か月以上)、救急医療(3か月以上)、2年目の地域医療(1か月以上)に限定する。外科、小児科、産婦人科、精神科、麻酔科は2年目に2科目を選択できる。3)都道府県別の募集定員や上限を設定する。定員の上限は基本的に、都道府県の人口などに応じて決め、医師の少ない県には加算する。要するに、大学病院の医師派遣機能を強化することにより医師の診療科や地域による偏在の解消を狙う形になっている。
 厚生労働省の医道審議会医師臨床研修部会は、その後パブリックコメントを受付け、要望を一部取り入れた見直し案を4月最終的に了承した。厚労省は必要な省令や通知を改正し、見直された臨床研修制度を来年度(2010年)から導入する。
 しかしながら、いくつかの問題点が新聞論調などで指摘されている。例えば、医師不足にどう対処するかという問題と、新人医師をどう教育するかという問題は別に考えるべき問題である。研修のあり方を見直せば、直ちに医師不足が解消できるというほど単純な問題ではない。当面の医師不足解消のために制度を変えるというのでは本末転倒である。
 筆者もこの考えに賛同する。というのは、我が国では超高齢化社会を迎え、病気中心の専門診療から、治り切らない複数の病気を持つ高齢者を総合的に診る総合診療への転換が求められている。医師不足の問題は数や偏在よりも、総合医が不足していることに主因がある。
 2004年度から始まった臨床研修制度は、基本的な臨床能力を身につけさせる目的で始まった制度であった。この視点を忘れた数合わせのような拙速な改革は、結局、問題の抜本的解決を遅らせることにならないかと危惧する。(TI


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(No123n;2009/07/24)


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