医療教育情報センター

No128 新型インフルエンザと免疫

 豚の間で流行していたインフルエンザウイルスが人に感染するように変異した新型インフルエンザ(A型、H1N1亜型)が、世界的に流行している(新しい<診療理念No061医療ニュースNo122)。新型インフルエンザの特徴は、鳥インフルエンザや重症急性呼吸器症候群(SARS)と異なり、感染力は強いが重症化することは少なく、健康な人は軽症のまま回復する。
 もう一つの特徴は、冬季に流行する通常のインフルエンザと異なり、感染者は若者に多く高齢者に少ないことである。その原因として、高齢者は新型インフルエンザと遺伝子配列と抗原性が類似しているウイルスに過去に感染し、免疫を獲得している可能性が考えられている。
 実際、アメリカの疾病管理センター(CDC)の報告によると、60歳を超えた年齢の人々の一部に、ブタ由来ウイルス(A型、H1N1)に対する交差抗体が認められたという。その後、我が国の国立感染研究所でも60〜100歳代の高齢者30人の血液を分析した結果、4割にあたる12人の血液から新型インフルエンザのウイルスに反応する抗体が確認された。
 こうした点から、感染の予防に新型インフルエンザに対するワクチンを接種することが有効であることは論を待たないが、新型の場合、流行するまで対応するワクチンを製造できないことや、現在我が国で行われている有精卵を用いた製法では短期に大量生産できない問題がある。
 このため厚生労働省は、国産ワクチン接種対象者の優先グループを決め、10月19日から接種を開始した。一位は診療に当たる医療従事者、2位は妊婦と持病のある人、3位は小学校就学前の小児である。小中高校生と高齢者も対象に加えているが、国産ワクチンが足りないため輸入ワクチンを12月下旬より接種する計画である。
 インフルエンザ感染予防の第一原則は飛沫感染と接触感染による感染経路を断つことであり、第二原則は各人の抵抗力を高めることである。アメリカの医療機関でナンバーワンの評価が高いメイヨークリニックでは次のような個人的予防法を勧めている。@予防接種を受ける。A頻回に手洗いをする。B野菜と果物を含むバランスのとれた栄養、玄米、脂肪の少ない蛋白質を摂る。C充分な睡眠をとる。D恒常的に運動する。E人ごみを避ける。注目したいのは食事と運動である。これはインフルエンザ対策に限らず、ふだんから健康のために行う養生の要になることである。
 現在わが国ではコンビニ受診による救急医療の崩壊が問題になっているが、新型インフルエンザの対応でも、自分さえよければという考え方で、健康な人まで医療機関に集中すると、重症の人が救急治療を受けられない事態になる。全員がタミフルを服用することになれば、結果的に国民の多くが免疫を獲得せず、新型インフルエンザの終息を遅らせることになる。
 新型インフルエンザへの対応を契機に、医療は国民の共有財産であることを再確認し、国民一人ひとりが普段から養生に努め、医療を適切に活用するようにしたいものである。(
TI


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(No128n;2009/10/19)


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