医療教育情報センター

No130 子宮頚がんの新しい知識
      −ヒト乳頭腫ウイルス(HPV;Human Papilloma Virus)が原因−

 子宮癌は大別すると体部癌と頚部癌とがある。体(部)癌は子宮内膜の上皮細胞から発生する(註:癌腫は上皮細胞から発生する悪性腫瘍)ので、内膜癌とも呼ばれる。内膜は女性ホルモンの影響で月経の時に剥脱する。それが月経周期である。内膜癌(子宮癌)は閉経期以後に多い。内膜は毎月剥脱するので閉経するまでは、癌細胞は発育できないのかも知れない。
 頚(部)癌は頚部粘膜の上皮細胞から発生する。子宮癌の大部分はこの頚癌であり、内膜癌は少ない。子宮頸癌は20歳代、30歳代の若い人にも増えているという。子宮頚部は子宮の出入口側である。一部は膣の内腔へ向かって突出していて、そこを子宮膣部と呼ぶ。子宮頚部は管になっている(子宮頚管)。子宮頚管の出入口を外子宮口と呼び、顕微鏡で見ると膣から連続している重層扁平上皮という厚い丈夫な上皮で覆われているが、突然一層の円柱上皮(粘液などを産生、分泌する)に変わる。子宮癌はこの扁平上皮と円柱上皮の接合部附近から発生する。産婦人科医は内診時に子宮膣部並びに外子宮口を肉眼で見ることができる。癌は組織の表面を覆っている上皮細胞から発生するので、膣部を綿棒などで擦れば表面の細胞が剥がれ、それを顕微鏡で見れば癌細胞を容易に発見できるとアメリカのGeorge N. Papanicolaou博士(1983-1962)は考え、現在世界中で行なわれている擦過細胞診を確立した。それで多数の女性を対象にして子宮頸癌の検診が可能となった。おそらく世界中で何十万或いは何百万の女性が救われてきたと思われる。
 その細胞診で上皮細胞の核の周囲が明るく見える(核周囲明暈)ことがある。皮膚の疣(種類は沢山あり、多くは良性)でもこのような細胞変化が見られる事は古くから知られており、この皮膚病はヒト乳頭腫ウイルス(HPV)が原因であるとされてきた。子宮頚部上皮にも似たような細胞変化が見られるが、これは“前癌状態”とも言えるもので、将来癌へ進展する恐れがある。この変化を現在は異形成(dysplasia)と呼んでいる。このHPV には100以上のタイプがあり、発癌に関係のないものもあるのが、6、11,16、18型などは発癌性があるという。この研究の嚆矢となった研究者は2008年のノーベル賞を受賞した。このウイルスは性交渉によって感染する。HPVの持続的感染があると数年から十年位で浸潤癌に進展するという。ウイルスなのでワクチンでの予防が可能であり、日本でも最近承認された。これからは予防に繋がってゆくであろう。対策が成功すれば、20年後、30年後には子宮頸癌は激減するのではないか。(IS
→関連記事(医療ニュース No127n)子宮頸がんワクチンと検診


子宮頸 細胞診 乳頭腫ウイルス ウイルス発癌 癌ワクチン 
(No130n;2009/11/12))


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