医療教育情報センター

No132 薬による健康被害

 治療のための薬で健康被害を受けた入院患者が5人に1人に上がることが東京、京都、福岡の病院を対象にした調査でわかった。3病院とも入院ベッドが500床以上あり、各地で中核的な役割を担っている。軽微な副作用から命にかかわる深刻な例まで全部で千件以上あったという。
 この調査は京都大学大学院の臨床疫学講師森本剛氏らの研究グループにより行われたもので、調査担当者を派遣して病院の協力を得てカルテや検査データなどを綿密にチェックした。薬が関係し健康被害を拾い出す研究は国内では初めてである。他の医療機関でも同様の問題がある可能性があるとみて、こうした被害の未然防止や重症化防止の仕組みづくりが必要であることを訴えている。
 研究グループは2004年1〜6月、産婦人科と小児科を除く3病院の全診療科で15歳以上の3459人について調査した。薬の種類や量を間違えて症状が悪化したような明らかな間違えを始め、通常の治療の範囲内で、鎮静薬を多量に投与された高齢者の意識レベルが低下したり、消化管出血、アレルギー反応、下痢、腎機能の低下などが起きたりした例を含め「薬剤性有害事象」として集計した。投与直後だけでなく継続的に観察した。調査結果によると、726人に1010件の有害事象があった。このうち14人(16件)が死亡し、集中治療室での治療や人工呼吸器などが必要になる「生命にかかわる」被害が46人(49件)、消化管出血や発熱、血圧低下など「重度」の被害が272人(330件)に見られた。死亡例では、抗菌薬による腸炎や下痢、非ステロイド系抗炎症薬を使った後の消化管出血などがあった。全体の14%、141件が医師の指示や薬剤師のチェックなどの「エラー」によるもので、他のより良い手段で経過を変えられた可能性があると判定した。調査担当者により初めて気づかれたのが141件中46件、院内報告制度で報告されていたのは19件にとどまった。
 薬剤性の有害事象は見逃されやすいので、把握のために一定の基準を作り、担当薬剤師らが日常的に患者の症状をチェックし、速やかに医師に伝える仕組みを導入すべきであると提言している。(SS


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(No132n;2009/12/25)


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