医療教育情報センター

No134 日本プライマリ・ケア連合学会が発足

 近年、医師の不足や偏在を主な原因として進行する医療崩壊が国家的な問題になっており、厚生労働省は医学部入学定員の増加や卒後臨床研修制度の見直しなどの政策を打ち出しているが、根本的な問題解決にはならないと考えられる。と言うのは、わが国はすでに高齢社会を迎え、急性重症疾患から生活習慣病を中心とする慢性軽症疾患への疾病構造の変化、患者の人権意識の高まりによる自己決定権の主張や医療訴訟の増加、医療費の高騰など医療をめぐる諸問題は、従来の細分化された疾患中心の専門診療のみでは対応できなくなってきているからである。この観点からすると、不足しているのは専門医でなく、患者を総合的に診ることができる医師ないし地域でホームドクターとして診療にあたる“かかりつけ医”であるといえる。
 現在、我が国で総合的な医療を展開することを目的としている学会として、日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会の3学会が存在する。日本プライマリ・ケア学会は医師(プライマリ・ケア医)以外に、看護師や技師など医療関連職種も加入する多職種の会員構成を特色とする、日本家庭医療学会は若手の医師を中心として地域医療を担う医師(家庭医)を育成することを最大の目的としている、日本総合診療医学会は専門性の高い大病院において総合診療を展開したり研修医教育に力を入れる医師(総合診療医)を中心としている。
 このように、3学会はそれぞれ特色を有するが、専門細分化、身体面の偏重、研究の重視など“病気中心の医療”から、患者のニーズに応じて精神・心理・社会的な問題にも目を向け、病んだ一人の人間を家庭や地域を含めて診る“病人中心の医療”を目指している点では共通している。  3学会は、2005年京都で開催されたWONCA(世界一般医・家庭医学会)に合同で参加した(医療ニュースNo041;2005/06/06)のを契機に、3学会合同会議を開催して合併について協議を進めてきた。日本の中でプライマリ・ケア医、家庭医、総合診療医などの役割を追求し普及させるには、国民のニーズに沿った取り組みが必要であること、国民にとってわかりやすい制度であり、国民にとって価値のあるものでなければならないことを確認し、これを実現させるためには3学会の合併を進めることが最重要であるという点で意見の一致をみた。
 これを受け、3学会はそれぞれ合併について会員の同意を取り付け、本年4月1日より日本プライマリ・ケア連合学会として大同団結し、新しくスタートすることになった。新学会としての,第1回学術集会は2010年6月26日(土),27日(日)に東京国際フォーラムで行われることが決定している。
 今後の具体的な活動として総合医療に関する研究は当然であるが、社会のニーズや3学会が合併した経緯からしても、総合的な医療を展開できる医師(ジェネラリスト)を育成できるプログラムを作成し、認定する作業が喫緊の課題である。国としてもこれに対応して立ち消えになった「総合科」新設について(医療ニュースNo081;2007/08/17)、改めて検討すべきであると考える。
 総合医療が我が国で発展成長するためには、こうした医療者側の努力と共に、国民の支持が欠かせない。これまで国民は病気中心の専門診療に対して大きな期待を寄せてきたが、今後は病人中心の総合医療が必要不可欠であるとする意識改革が求められる。(TI)


医師不足 専門診療 総合診療 日本プライマリ・ケア連合学会 ジェネラリスト  
(No134n;2010/02/05)


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