医療教育情報センター

No141 冠動脈のマルチスライスCT

 病気を知るには病気の場所を直かに見ればよく分かる。しかし身体の内部の出来事は外からは見えない。内部を見ることが出来るようになったのは、レントゲン博士によって開発されたX線写真によることはよく知られている。その後100年以上をかけて、内視鏡、CT (Computed (computerized) Tomography、コンピューター利用立体X線写真)、カテーテル利用によるシネX線血管写真(Cine‐angiography)、MRI (Magnetic Resonance Imaging, 磁気共鳴映像法)や超音波法などが開発され、医療現場に登場してきた。
 冠動脈は心臓を養っている動脈である。この動脈が詰まると心筋梗塞になる。 動脈が詰まる理由の多くは動脈硬化である。動脈硬化は長い年月をかけて多種類の因子が絡みながら進行する。この時期は多くの場合無症状であり健康であると思っている。心筋梗塞は突然起こる。
 冠動脈を直接見るのは難しい。動脈にカテーテルを通し、それから造影剤を流し映画を撮りながら動脈内を描写する方法が開発され、動脈の、特に内腔の狭窄を観察できるようになった。更にこの方法は治療にも使われるようになった。縮めた風船をカテーテルに装着し動脈の中へ通し、動脈硬化の場所で風船を膨らませて拡げようという試みである。カテーテルの先にメスを付けて動脈硬化巣を削り取る方法やステントと呼んでいる篭状のものを挿入して篭を拡げることによって狭窄箇所を広げる方法などが工夫され、実際に用いられてきた。このような治療法は手術を必要としないので非観血的治療と呼ばれている。
 治療ではなく診断のための冠動脈カテーテルによるX線血管造影法であっても冠動脈の中にカテーテルを挿入しなければならない。カテーテル挿入操作によって動脈の内皮細胞はある程度傷害されるかも知れない。内皮傷害は動脈硬化を進展させたり、動脈の過度の収縮(スパズム、攣縮)を惹き起こすことがある。従って診断のためのみであれば、動脈内皮を傷害することを出来るだけ避けたほうが良い。そのような理由からマルチスライスCTが開発された。この方法はCTを撮るに当たって身体を多層のスライス(薄片)にしてそれを立体化して図示するものである。これによって細い冠動脈も可視化される。(IS


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(No141n;2010/05/28)


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