医療教育情報センター

No143 看護師の人材確保とワーク・ライフ・バランス(WLB)

 日本看護協会は2010年度の重点事業の一つとして,看護職の労働条件や労働環境の改善に取り組んでおり,7月15日に看護職の労働時間などの適正化と医療施設等の労働基準法・労働安全衛生法順守のための支援強化について厚生労働省に要望書を提出した。人命を預かる緊張感の高い業務に24時間体制で従事する看護職の労働形態や労働負荷については、現行法に適切な規制がないため新たな規制の方策が必要であり、看護職の交代勤務に関する法令等の整備が急務であるからである。
 2007年度末時点の看護師就業者数は,看護師882,819人,准看護師411,272名,合計1,294,091人であった(平成21年看護関係統計資料集)。日本人の人口は約1億2700万人なので、日本人100名のうち1名弱が看護師・准看護師として働いていることになる。また20〜59歳の女性に限った場合その数約3,300万人なので,生産年齢の女性の約25人に一人が看護職として就業していることになる。看護師が最も多く就業しているのは病院(72.5%)である。一方、看護師の資格を持ちながら、看護に従事していない者も約65万人いると推計されている。
 現在、勤務医や介護職の不足が社会問題となっているが、看護師不足も同様である。その原因は看護職の供給量の不足ではなく、看護職の離職であると指摘されている。2008年度,病院全体の看護師の離職率は11.9%である(日本看護協会:2009年病院における看護職員需給状況調査)。離職の背景には救命率の向上と平均在院日数の短縮による重症入院患者の占める割合の増加といった医療環境の変化と人員配置の少なさが指摘されている。日本看護協会で行った「2009年看護職員実態調査」でもその実態が浮き彫りになっている。看護師に「悩み・不安を感じている事柄」を尋ねたところ(複数回答),第1位は「医療事故をおこさないか不安である」(61.6%)であり、そのうちの49.3%はその悩みや不安が原因で離職を考えたことがあると答えている。第2位は「業務量が多い」(57.9%)ことであり,そのうちの64,4%はそれが原因で離職を考えたとしている。また看護職の大多数が女性であることから,結婚、子育て、更年期、介護といった女性のライフステージごとの課題の対策を考えないと離職予防はなかなか実現できない。
 日本看護協会では6月に「看護職のワーク・ライフ・バランス(WLB)地域推進連絡協議会」を開催した。WLBとは「仕事」と子育てや親の介護など「仕事以外の生活」の調和がはかれる状態を指す。望ましいバランスは人によって違うし、ライフステージによっても変化をする。各自が希望する形でそのバランスを決められることが重要である。そのために各職場は,育児・介護休業や看護休暇などの「休暇・休業制度」の整備や残業抑制策や短時間勤務制度、フレックスタイム制度などの「働く時間の見直し」など、労働条件,労働環境の整備を進めていく。看護師がワーク・ライフ・バランスを実現しキャリアを継続することができれば、医療施設における看護師の人材確保・定着につながり、看護サービスの向上が可能となる。医療施設では、診療報酬の厳しさや、職場風土の「壁」があるが、日本看護協会では、今後地域ごとにワークショップを開催し、短時間正職員制度をはじめとする多様な勤務形態の導入を支援していくという。(EN


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(No143n;2010/07/27)


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