医療教育情報センター

No145 腫瘍内科医の養成

 がんは昭和56年より死因の1位を続けている。最近、厚生労働省より公表された平成21年度の統計でも全死亡者数114万2千人に対して、がんによる死亡者数 34万4千人であり、むしろ増加傾向にある。まさに2人に1人がんになり、3人に1人がんでなくなる時代といえる。
 こうした状況を背景に、平成18年6月「がん対策基本法」が参議院本会議で全会一致で可決・成立し、平成19年4月に施行された。同法案は全体目標として、がん死亡者の減少と全てのがん患者・家族の苦痛の軽減。重点的に取り組むべき課題として、放射線療法及び化学療法の推進、これらを専門的に行う医師等の育成、治療の初期段階からの緩和ケアの推進が掲げられている。
 文部科学省はこれを受け、平成19年度から国公私立大学におけるがん医療に関する専門家の養成を支援するために「がんプロフェショナル養成プラン」を策定した。全診療科に共通するがん治療の知識・技術を習得したがん治療認定医、サブスペシャリティとして腫瘍内科医、放射線腫瘍医、緩和医療専門医の養成システムの構築を進めている。腫瘍内科医については、がん薬物療法専門医を養成するコースが全国の大学院医学系研究科に設置された。
 がん治療の3本柱は手術、抗がん剤、放射線治療であるが、これまでは手術が中心で、薬による化学療法も外科医が行うことが多かった。その理由として「昔の抗がん剤は効かなかった」ことがある。しかし今では白血病や乳がんなど、薬で治癒が期待できるがんも増えた。分子標的治療薬など新しい抗がん剤が開発され、薬の種類が増えた。それらを組み合わせた科学的根拠に基づく標準治療も次々と登場している。外科医が片手間にできる時代ではない。
 腫瘍内科医は、がんの種類にかかわらず幅広い知識を持ち,患者に合った適切な医療を提供することが期待されている。さらに治癒が望めなくても、薬で痛みをコントロールするなど患者のQOL(生活の質)を保ちつつ延命を図ることも可能になった。その主役が腫瘍内科医であり、活躍の場の一つが外来がん化学療法である。
 しかしながら、がんによってその性格や進展度はさまざまで、患者の置かれた状況や価値観も一人ひとり異なる。画一的な“標準治療”で患者の満足が得られるとは考えられない。患者毎に手術、放射線治療、抗がん剤を適切に選択する必要がある。そのためには、アメリカのように、外科・内科・放射線科に加えて痛みの専門家である麻酔科まで含めた、頻回なカンファレンスが必要である。この場で主役を演ずる、高い識見と優れた人格を兼ね備えた腫瘍内科医の登場が望まれるところである。(TI) -->


がん対策基本法 がんプロフェショナル養成プラン 腫瘍内科医 放射線腫瘍医 外来がん化学療法
(No145n;2010/08/20)


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