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ロコモティブシンドローム(運動器症候群)

 2008年(平成20年)10月1日現在のわが国の総人口は1億2,769万2千人であり,そのうち65歳以上の老年人口は2,821万6千人で全人口の22.1%を占める。前年に比べて老年人口は0.6ポイント上昇しており,人口の高齢化はさらに進んでいる。長寿は喜ばしいことではあるが,高齢者介護の問題は,老後の不安要因の一つとなっている。
 わが国では社会全体で介護を支える新たな仕組みである介護保険制度を2000年(平成12年)にスタートさせた。制度創設時の要介護認定者は218万2千人であったが,2005年(平成17年)には410万8千人,2010年(平成20年)には454万8千人と,その数は10年間で約2.5倍に増加した。
 介護が必要となる原因として「脳卒中」や「認知症」などを考えがちだが,国民生活基礎調査(厚生労働省:2007)によると,要介護となった原因の第1位は「関節疾患」(20.2%)であり,以下、「高齢による衰弱」(16.6%),「脳血管疾患」(14.9%),「転倒・骨折」(12.5%)であった。「関節疾患」「転倒・骨折」といった骨や関節,筋肉など,身体を動かす運動器の障害が,要介護の原因の30%以上占めていたという。このことから要介護や寝たきりにならず,自立した生活を送るためには,運動器の健康を守ることが重要であることが明らかになった。そこで日本整形外科学会では,全身の状態から要介護のリスクを見つけ,早めの対策を始めることを目的に「ロコモティブシンドロ−ム(運動器症候群) 」という新たな概念を提唱し,運動器疾患の発症予防に取り組んでいる。
 ロコモティブシンドロームとは,骨や関節,筋肉,神経などが衰えて運動器に障害が生じ,要介護や寝たきりになってしまうこと,またはそのリスクが高い状態のことをいう。われわれの身体には,骨,蝶つがいの働きをする関節,関節を結ぶ靭帯や筋肉,関節にかかる負荷や衝撃を和らげる軟骨組織などがあり,これらが連携して働くことによって,絶妙な身体のバランスを保ち,直立二足歩行を可能にしている。しかし加齢とともに,骨格を支える筋肉の衰え,膝関節の軟骨や背骨の椎間板の変性,骨量の低下などが起こる。それらが相互に関係し複合することによって,起立や歩行の障害という身体症状が現れてくる。このように,ロコモティブシンドロームは,バランス能力の低下,筋力の低下,そして骨や関節の病気によって起こる。病気のなかでも骨粗鬆症,変形性膝関節症,脊柱管狭窄症が代表的疾患である。
 ロコモシンドローム予防のために,日本整形外科学会では,自分で簡単にチェックできる「ロコモーションチェック(ロコチェック)」表を作り,以下に示す7項目をあげた。 @ 脚立ちで靴下がはけない。A家の中でつまずいたり滑ったりする。B横断歩道を青信号で渡りきれない。C階段を上るのに手すりが必要。D15分くらい続けて歩けない。E2s程度の買い物(1リットルの牛乳パック2個程度)をして持ち帰るのが困難である。F家のやや重い仕事(掃除機の使用,布団の上げ下ろしなど)が困難である。
 これらのどれか1つでも当てはまるものがあれば,足腰が弱って日常生活における身体への要求に運動器が応えられなくなっているサインである。運動器の機能を保つトレーニングが必要となる。筋肉は何歳になっても鍛えることができる。下肢筋力とバランス能力を高めるために,開眼片脚立ちとスクワットが奨められている。しかし関節軟骨や椎間板に障害がある場合には,専門医を受診し,病気の治療とともに自分に合った無理のない運動から始めることが大切である。(EN


ロコモティブシンドローム 要介護認定者数 ロコモーションチェック 下肢筋力 バランス能力
(No149n;2010/11/03)


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