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No150 今年のインフルエンザは?

 昨シーズン大流行した新型インフルエンザ(パンデミック2009 H1N1)は、年が明けた平成22年3月下旬にほぼ終息した。これは例年とは全く異なる流行パターンを示し、分離したウイルス株もその98%が、パンデミック2009 H1N1であり、その他のタイプは殆ど確認できなかった。
 WHOは本年8月10日に、流行が下火になったと声明を出し、日本でも8月27日に通常の季節性インフルエンザ対策に戻した。
 インフルエンザウイルスに関する知識は、このホームページの「新しい診療理念」、「新型インフルエンザはブタから来た」で既に紹介したが(No.061r、2009年5月28日)、昨シーズンのA型パンデミック2009 H1N1ウイルスは、感染力は強かったが、病原性は強くなかったのは幸いであった。
 20世紀に人類は3回のインフルエンザの大流行を経験しているが、2回目の1957年流行のアジアかぜ(H2N2)は、1968年に登場した香港かぜ(H3N2)の流行によって消褪した。一方、1918年大流行のスペインかぜ(H1N1)はその後、1950年にはイタリアかぜとなり、1977年流行のソ連かぜとなって、現在、香港かぜとともに季節性インフルエンザとして流行を繰り返している。
 わが国では2005年と2006年冬のシーズンはA型香港かぜ(H3N2),2007年と2008年はA型ソ連かぜ(H1N1)が主流行であり、昨年が新型パンデミック2009であった。
 それぞれのウイルスのタイプによる症状を比べてみると、一般にH3N2香港型は症状が重く、昨シーズンの2009H1N1は比較的軽いことが特徴的であった。また昨シーズンの2009H1N1は、オセルタイビル(商品名タミフル)やザナミビル(商品名リレンザ)がよく効いたことも周知の通りであった。
 死亡率も本年5月末日までのパンデミック2009H1N1の死亡者数は199人、人口10万人当たりの死亡率は0.16であり、カナダの1.32、ドイツの0.31と比べて非常に低かった。これはわが国の医療体制の完全さを誇るもので、ワクチン接種の徹底化、患者は直ぐに医療機関を受診でき、抗インフルエンザ薬を早期から服用できたためと考えられる。
 今シーズンのインフルエンザの流行については、2010年第42週(10月18日〜24日)の国内の定点当たり報告数は0.12と未だ流行は始まっていないが、専門家の予測では昨シーズンのようなパンデミック2009H1N1ウイルス一色とはならない可能性があるという。既に今シーズンの流行期に入っている南半球では、パンデミック2009H1N1に加えて、A香港型(H3N2)やB型の流行が認められた。従って国内でも、H3N2(A香港型)が流行する可能性がある。現にH3N2は中国で報告が見られており、国内でも本年10月以降、小流行が報告されている。H3N2はここのところ流行しておらず、ワクチンによる個人の免疫効果も減弱していることが予想され、流行し易い可能性は高い。
 A香港型(H3N2)は比較的重症になり易く、高齢者では肺炎を合併する率も高い。今年のワクチンにはパンデミック2009H1N1とH3N2(A香港型)、B型の株が含まれているから先ず安心してよい。早くワクチンを接種することをお勧めしたい。(NH


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(No150n;2010/11/15)


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