医療教育情報センター

No152 「癌」にもいろいろ −治療はオーダーメイドの時代−

 ここでいう「がん」は癌腫(上皮性悪性腫瘍)も肉腫(非上皮性悪性腫瘍)も含む全ての悪性腫瘍の意味であると受け止めて頂きたい。「癌」というと、命取りとなる極めて恐ろしい病気であると直ぐに考え勝ちである。しかし「癌」のなかには、十数年或いは数十年という長い経過をとるものもあるし、短い経過で死に至るものもあることを知っておいてもらいたい。だから医師の説明をよく聞いて理解して頂きたい。
 例えば昔は甲状腺の“転移性腺腫”というおかしな病名があった。転移を起こすものは癌であるが、腺腫は良性腫瘍なのである。これは顕微鏡で見て“良性”に見えたものが、後から転移をきたす例に遭遇して、理屈に合わない病名が生まれたためである。顕微鏡での見かけと腫瘍の本質との間に食い違いがあったということである。「外面如菩薩、内面如夜叉」である。悪性と思われていたものが、多くは良性らしいとその後分かった反対の現象もあった。それは骨の「巨細胞腫瘍」と乳腺の「葉状腫瘍」である。これらの腫瘍は見かけが悪そうだったので、骨の巨細胞“肉腫”とか、乳房の葉状“肉腫”と呼ばれていた時代があった。しかし転移を起こす例が、皆無ではないが、非常に少ないことが判明したので病名を変えた。これは「外面如夜叉、内面如菩薩」の例である。
 同じ胃がんや肺がんあっても、浸潤能力や転移率の高いものと、それ程でないものとがある。前立腺がんが検診時にPSA(Prostatic Specific Antigen、前立腺特異抗原)検査のお蔭で見つかるようになった。しかしこのがんは長年に渡り前立腺内に留まっているものが結構多い(潜在癌)。骨に転移しても長生きした人もいる。
 乳がんに対して乳房全摘出という大手術をしなくてもよくなったのは、同じ臓器・組織の癌であっても、それぞれ個性があり、手術、ホルモン療法、放射線療法或いは抗がん剤など治療のメニューを選択できるようになった(オーダーメイド)からだ。
 悪性リンパ腫や白血病は血液内を流れ歩いている白血球のがんであるが、この病気を多くの様々な種類に分類するのは、それぞれに対する薬剤の組み合わせを始めとして治療法が異なるからである。これも医学の進歩で解明されたお蔭であり、解明とその応用への研究は更に継続している。
 子宮頸がんの原因がヒト乳頭腫ウイルス(Human Papilloma Virus)であることが判り、ワクチンが開発された。数十年後には日本人女性の発生率は激減するだろう。(IS

     [参考] 1.医療ニュースBack Number No.28n, No.32n, No.130n    
          2.堤 寛著:病理医があかす タチのいい癌、悪いがん 双葉社 2001年第1版


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(No152n;2010/12/02)


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