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No156 臓器移植法改正後の小児の脳死移植はいまだゼロ

 わが国では、平成9年の臓器移植法施行規則により、「脳死」が人の死と法的に認められ臓器移植が可能となった。しかしその後の脳死下臓器移植件数はそう多くなく、平成11年から21年までの10年間に82件に過ぎない。
 問題となっているのは、臓器を提供するドナーの意思の確認であり、そのために出来るだけ多くの人に「臓器提供意思表示カード(ドナーカード)」を生前に持ってもらうことであった。しかし意思表示がない小児は、臓器提供の意思を表示することはできない。これを受けてこれまでの「法的脳死判定マニュアル」は、15歳未満の小児には脳死判定を行わないものとしてきた。そのためわが国では小児の心臓移植は不可能であり、海外で小児のドナーからの心臓移植が行われていた。
 平成21年、臓器移植法が改正され、平成22年7月施行となった。改正法では、本人に臓器提供の意思がない場合、あるいは分らない場合には、遺族の承諾で臓器提供が出来るようになった。これによって15歳未満の小児からの脳死下臓器提供が可能となった。
 改正法が施行されてから、小児の脳死下臓器移植の実情はどうかということは関心のあるところである。この点について、平成23年1月17日読売新聞朝刊1面に、全国の大学病院や小児専門病院など54施設からのアンケート調査結果が掲載されたので紹介する。
 それによると脳死と考えられる小児は11人いたが、このうち6人は病院側と家族との間で臓器提供の話し合いは行われたが、家族の同意は得られなかったという。残りの3名は、「虐待が疑われる」と判断し、家族と話し合いは行わなかった。1名は両親が「脳死は人の死でない」と主張し、もう1名は容態が悪く間もなく心停止したという。
 結果的には11人の脳死小児のうち、臓器提供がゼロであったということは、子供の臓器提供の難しさが改めて痛感される。小児の脳死下臓器提供の場合、脳死状態になった子供の両親や家族の苦悩は、やはり大人の場合とは大分異なることであろう。 因みに大人の場合は、改正後、本人の書面による意思表示がなくても、家族の承諾で臓器提供が可能であったのはこれまでに30例あり、今後も増加することが予想されるという。(NH


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(No156n;2011/02/13)


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