医療教育情報センター

No159 プライマリ・パリアティブケア

 終末期の患者に対するホスピスケアがかなり普及している英国で、がん患者の65%は自宅で最期を迎えることを望んでいるが僅か30%でしか適えられていない。それを改善するためにはプライマリケアの中にパリアティブケアを取り入れることが必要と考えられた。2002年にR.Charitonの編集によるPrimary Palliative Careが出版され、2004年S.A.Murrayらはプライマリ・パリアティブケアの必要性を訴える論文を発表している。さらに2008年MA.Gisondi らは救急医療の中にパリアティブケアを必要とする患者が多くあり、救急医療の専門医教育カリキュラムの中にパリアティブケアを取り入れなければならないことを述べている。プライマリケアは患者が何らかの症状を訴えてきた最初の診療を開始する医療で、パリアティブケアはがん等の終末期の症状緩和を目的とする。
 パリアティブケア専門医の行う全人的な患者中心のケアは家族や友人も含めて提供され、これはプライマリケアでも共有され、チーム医療に適している。パリアティブケアはガン末期患者だけでなく、高齢者の慢性疾患の末期の患者にも同じように提供できる。 現代の非常に専門化した医療の間隙を補う分野として、特に第一線の医療現場ではプライマリケアの必要性が強調され、最近、病院では総合診療科として診療が行われている。がん末期患者に対する緩和医療が普及するに従い、自宅で最期を迎えたいという患者の希望に沿えるように在宅での看取りも増えてきている。
 昔から地域医療を支えてきた開業医は最期まで患者を自宅で看取っていたが、現在は医療技術の進歩と家族の医療への期待が大きく、最期まで病院での治療を希望することが多いようである。しかし医療には限界があり、末期患者の症状緩和が適切に行われるならば、住み慣れた自宅で家族や知人に囲まれて安らかな最期を迎えることが可能である。その対策の一つとして、健康保険で在宅療養支援診療所が創設されている。超高齢社会となったわが国では、2040年には死亡者数も年間160万人を超えることが予測され、全てを病院で対応することは不可能であり、特別な治療を終えたがん患者の末期を含め高齢者の末期の看取りは地域で見るのが望ましいと考える。
 今後は地域医療を支える医師は高齢者のプライマリケアを含め最期を看取る役割としてパリアティブケアを分担しなければならなくなる。看取りは医師だけでは出来ないので、訪問看護師やヘルパーなどとチームで実践する必要がある。そのために医学教育と卒後臨床研修のカリキュラムの中に医療の基本的問題解決の一部として緩和医療を必須項目として取り入れ、高齢者やがん患者の末期症状の緩和方法や看取りの技術を修得することが必要である。(SF


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(No159n;2011/04/08)


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