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No161 生命の駅伝

 人気アイドルグループ「キャンディーズ」のスーちゃんとして親しまれ、4月21日に乳がんのため55歳で死去した女優、田中好子さんの葬儀・告別式が25日、東京都港区の青山葬儀所で営まれ、多くのファンや関係者が参列した。
 出棺前には、田中さんが生前に録音し、夫の小達一雄さんに託していたメッセージが披露された。田中さんは、振り絞るような声で東日本大震災の被災者を気遣い、「私も一生懸命、病気と闘ってきましたが、もしかすると負けてしまうかもしれません。でも、そのときは、必ず天国で、被災された方のお役に立ちたいと思います」と話した。
 死を覚悟した苦しい病床で、家族に向かってではなく、顔も名前も知らない他人である被災者を気遣うメッセージを残した彼女は、マスコミを通じて全国民に大きな感動を与えた。あるコラムニストは「打ちのめされた心境である」と書いている。
 田中さんは結婚した翌年に乳がんを発病し、闘病生活は19年に及んだ。この間、何回もがんの再発に見舞われた。間違いなく、日々、死を見つめて懸命に生きた19年間だったと考えられる。だからこそ、こうしたメッセージを最期に残せたのであろう。
 内容は異なるが、自らがんを患い入院中、がんで亡くなっていく幼い子どもたちを見て、がん研究に役立てる募金を思い立ったカナダのテリー・フォックスという青年がいる。彼は18歳で骨肉腫になり右足を切断。手術後3年目の1980年、募金を呼びかけながら北アメリカ大陸横断を計画。義足をつけて毎日、フルマラソンと同じ42kmを走り続けた。しかし、143日目、約6000kmを走ったところで肺に転移が発見され入院した。
 彼の思いは遂げられなかったが、カナダで大々的に報道され、彼の思いに感動した人々が一斉に募金をし、目標を遙かに上回る約20億円が集まった。約1年後、22歳の若さで亡くなったが、彼の遺志は引き継がれ、「テリー・フォックス・ラン」として毎年開催されている。
 この運動は次第に世界中に広まり、今では世界58の国々で開催されており、日本では1995年より毎年開催されている。がんと闘う人たちを励まし、がん研究を支援するための募金を呼び掛けながら、各地を走破する「テリー・フォックス・ラン」は、わが国では「生命の駅伝」と名づけられている。今年も5月14日から22日までの間、三重県、愛知県、大阪府、和歌山県、福岡県、大分県、熊本県、茨城県などで全国的に展開された。
 がんはわが国の死因のトップを続けており、がんの治癒を目指すことはもちろんであるが、田中さんががんを持ちながら演じた素晴らしい演技は、がんを持っていかに生きるかを示している。彼女の生き様は、メッセージとともにいつまでも語り継がれるに違いない。(TI


田中好子 乳がん テリー・フォックス・ラン 生命の駅伝 がん研究を支援するための募金
(No161n;2011/06/03)


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