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No162 前立腺特異抗原(PSA)で何が分かるか

 前立腺特異抗原prostate specific antigen(PSA)は前立腺から分泌される精液に含まれている糖蛋白(糖質と蛋白質が結合している高分子物質)である。Specific とはそこにしかない、他の臓器では造られないという意味である。抗原であるからそれとしか反応しない特異抗体を作れば、抗原の量を正確に測れる。ナノグラムという微量のものが測れるようになった。これはRosalyn S. Yalow博士のノーベル賞受賞の対象となった放射能利用免疫分析法(Radioimmunoassay)の確立による。精液の中には勿論精子がある。その精子は鞭毛をもっていて動くことができる。精液の粘度を調整して精子の運動を助けているらしい。
 この抗原は前立腺の上皮細胞から分泌される。癌は上皮細胞が悪性腫瘍化したものだから、これが異常に高値になれば前立腺癌が疑われる。今は臨床検査で迅速に測定できる。一般的には4 ng/ml以下が正常値とされている。このPSAは早期前立腺癌でも高値を示すので前立腺癌の腫瘍マーカーとして用いられている。PSA値が4から10ng/mlが怪しい値(グレイゾーン)とされているが、 前立腺炎や前立腺肥大症でもこの程度の高値になることがあるので、注意が必要である。疑われる場合にはMRIや針生検による病理組織診断が必要となる。
 PSAを継続して測ることにより、前立腺癌などの経過、再発などを知ることができる。癌であっても前立腺癌の多くは発育が遅いということが昔から知られていた。他の病気で死亡した高齢者の病理解剖で前立腺を顕微鏡で調べるとかなりの率で転移の無い小さな癌が発見され、これを潜在癌と呼んで、病理医、泌尿器科医には数十年前からよく知られていたことである。癌であれば、手術、放射線療法、ホルモン療法が選択される。男性ホルモンによって増殖、発育するので男性ホルモンの働きを止めるか、女性ホルモンによる治療法もある。前立腺癌に対する女性ホルモン療法の原理を見つけたCharles B. Huggins教授はノーベル賞を受賞している。この考えは更に乳がんに対するホルモン療法へと発展している。(IS


前立腺癌 前立腺特異抗原 ホルモン療法 潜在癌 前立腺肥大
(No162n;2011/06/17)


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