医療教育情報センター

No172 医療評価と国民の満足度―特に高齢者医療の場合

 2010年4月、「医療制度に関する満足度調査」の結果がロイター通信により報道されたが、それによると日本は医療の満足度15%で、22カ国で最低レベルというショッキングな結果を示した。
 調査は、世界の国内総生産(GDP)の75%を占める22ヵ国を対象にした医療制度に関する満足度調査で、「あなたの家族が重篤な病気になったとき、手ごろで良質な医療を受けることはどれくらい難しいと思われますか」とインターネットで質問したものである。「やさしい」という回答は、スウェーデンの75%が最高で、以下、カナダ70%、英国55%、米国51%と続くが、日本は15%と22カ国のうち最低であった。
 一方、本年9月、世界的医学雑誌『ランセット』が、「国民皆保険達成から50年」と題した日本特集号を発刊した。アメリカが導入しようとしている国民皆保険制度を、日本は50年も前に達成し、平均寿命などの健康指標は世界トップレベルである。その上、日本の医療費はGDPの8.5%程度と米国の半分に過ぎず、低コストを実現していることが評価されたためと考えられる。  しかし今回の調査をみると、日本人の日本の医療に対する「満足度」は決して高いとは言えない。医療レベルや医療制度の充実からみる医療の評価と、患者の満足度は評価の基準が異なり、必ずしも平行しない。患者側は、より質の高い医療だけでなく、患者個人の尊重や患者中心の医療も求めるようになってきているが、こうした変化に医師側が対応できていないからであろう。
 つまり、病気を治せばいいということではなく、治し方や治らない場合の対応の仕方が評価に大きく影響する。超高齢化社会のわが国では、医療は「老いと死」にどのように向き合うか、国民も医療者側も真正面から議論することを回避してきた。医療の最終目的の一つとして、患者のQOL(生命の質、生活の質)の向上を重視する立場から、医療者側からの医療評価よりも患者側からの医療満足度が重要となる。
 患者の満足度は主観的、個人的な要素が多く、医療の客観的な評価になじまないという考えも勿論、存在する。逆に、医療の重要な側面は数量化されないし、数量化しやすいものだけが指標となっているとも言える。
 ちなみに、患者が不満を抱えた状態が続けば、治療の中断やいろいろな医療機関を訪ね歩くドクター・ショッピングなどのネガティブな側面が現れてくる。実際、高齢者は多くの身体的、精神的問題を抱え、問題が解決されないと、次々と専門医を受診し、その都度検査を受け薬を処方されるケースが珍しくない。これが医療費高騰の原因の一つともなっている。
 2008年に導入された後期高齢者医療制度は、“高齢者を姥捨てにするもの”だと酷評された。確かに、増え続ける老人医療費を、どう賄うかという議論から出発したものではあるが、基本的な考え方は、複数の慢性疾患をかかえる高齢者を総合的に診察できる医師が必要であるとし、地域で医師や看護師らがチームを組んで在宅医療を推進することにある。この考え方自体は間違っていないと考えられ、医療評価と患者満足度の面から改めて検討すべきではないだろうか。(TI


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(No172n;2011/12/16)


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