医療教育情報センター

No176 人間関係の疲れを防ぐ方法−バウンドリーの確立−

 日本人特有の傾向として,「物事を曖昧にする」ことがある。これは,日本の社会で「和」を保ちながら暮らすための伝統的な価値基準の1つであるといわれている。しかし核家族や少子化、終身雇用制度見直しなどの社会状況の変化は、日本人の生き方に関わる構造的な変化を生み出している。たとえば「介護は家族の手で」「男性は仕事で、女性が家庭を守る」という長年の伝統も変わらざる得ない状況にある。
 今まで曖昧のままにしていたことに対して、今度は自分自身が明確な考えやプランを持ち、自己確立しないと、自分の責任を求められたとき、どうしてよいかわからず強い不安感や孤独感に追いやられる。その結果、摂食障害、虐待、家庭内暴力などの不適応を起こしてしまう。これらの対応策の1つとして、自分と他人の間にバウンドリーを確立することがあげられる。バウンドリーとは、自分の責任の領域と他人の責任の領域の境界線のことである。その目的は、「どの領域が自分の責任で、ここから外側は私の責任ではない」ことをしっかりとわきまえることである。自己の責任と他人や社会の責任を明確にすることによって、自己の確立が可能となり、相手を変える事ではなく、自分を変えることで困難への解決をめざしていくというものである。そして結果的には互いに自立した人間関係が築かれるようになる。
 具体例を述べる。何度注意しても衣服を脱ぎ散らしかたづけない夫に対し、妻は不満を持つ。夫を変えることは非常に難しい。しかし自分の態度は変えることはできる。そもそも、がみがみ言われると大概人間は拒否をしたくなる。しかし「がみがみ」を我慢していると、妻はそのうち片付け始める。夫の責任を妻が果たしてくれることを夫は認識する。
 バウンドリーを確立するには、まず妻は夫の脱ぎ散らした衣服をかたづけるのは、自分の責任でないことを明確にして、夫の領域に入らないことが必要である。すなわち脱ぎ散らしを「放置」する。そして「絶対に相手の事を気にはしない」対応をする。むしろ冷たい対応は「あなたに関心があります」というサインになるからである。具体的には、いつもと変わらぬ対応をすることである。
 いままで夫の問題と思っていたことを、主体を自分にすることによって夫婦の関係を見直すきっかけとなる。相手が変わらなくとも妻の不満は最小限になり、冷静になれば最終的には相手にも変化が現れるようになる。(EN


バウンドリー バウンドリーの目的 不適応 自己の確立 自立した人間関係
(No176n;2012/03/05)


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