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No178 変形性関節症のユニークな保存的療法

 変形性股関節症は、関節のクッションの役目を果たす関節軟骨が徐々にすり減り、歩いた時に脚の付け根に痛みを感じる女性に多い病気である。日本では大腿骨頭がはまる臼蓋(きゅうがい)の形成不全に由来するものが多く、40〜50歳代の女性に多かったが、最近は欧米並みに高齢者にも多くみられるようになってきた。痛みが出る場所は、股関節部(脚の付け根)だけでなく、腰〜臀部、大腿前面〜膝などさまざまな場所に及び、診断に至るまでに回り道をすることもある。
 治療法としては、抗炎症薬や痛み止めの服用、筋肉を鍛える理学療法などが一般的であるが、根本的な治療法ではない。手術としては臼蓋、大腿骨の角度を変えたりする各種骨切り術、人工関節置換術などがあるが、これまで軟骨を再生するのはむずかしいとされてきた。
 しかし、本年2月1日に放映されたNHKテレビの「ためしてガッテン」で、「貧乏ゆすり」というユニークな保存的療法が紹介された。手術後のリハビリテーションの一環として取り入れたところ、およそ6割で軟骨の生成を促す効果がみられたという。その後、この治療法を手術をしていない患者さんの保存療法として用いたところ、ある事例では「貧乏ゆすり」と関節に負担をかけない生活の見直しだけで痛みが軽減し、X線検査で関節の隙間がしっかりと開き、軟骨の再生が確認された。
 具体的な方法は、@椅子に腰掛けた状態で、つま先を床につけたまま、かかとのみを繰り返し上下に動かす、いわゆる貧乏ゆすりと、A椅子に腰掛けた状態で、足を左右に大きく開いて閉じる動きを繰り返す方法がある。少なくとも30〜50回、食後に一日3回、3カ月以上続けると、痛みの軽減などの効果がみられる。
 なぜ効果があるのか。マウスの実験で、骨を切ってその部をすり合わせると、その部に軟骨が再生することが確かめられているが、それ以外に股関節周辺の筋肉をゆるめた状態で継続的に動かすと、血流がよくなること、軟骨に栄養を供給する関節液の循環を良くすることなどで、軟骨が生成されると考えられている。
 そして、変形性関節症のうち股関節以上に多い変形性膝関節症でも「貧乏ゆすり」に類した「振り子運動」の効果が報告されている(山野慶樹ほか:変形性膝関節症に対する軟骨温存を促す振り子運動療法. 別冊整形外科53:88-92,2008)。変形性関節症の発症には加齢も関与しており、高齢者に多い病気である。「貧乏ゆすり」「振り子運動」は副作用もないことから手術を敬遠する人には試みる価値があると思われる。(TI

<参考>井上明生(編著)「変形性股関節症は自分の骨で治そう!」メディカ出版 2008


変形性股関節症 変形性膝関節症 保存的療法 貧乏ゆすり 振り子運動
(No178n;2012/03/30)


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