医療教育情報センター

No179 心房細動アブレイション(ablation)  −不整脈回路の焼灼術−

 心臓には四つの部屋がある。心房と心室がそれぞれ左右あり、左右の心房の間には心房中隔が、心室の間には心室中隔があ って、生まれると左右の間で血液は混ざらなくなる。心室は壁が厚く、筋肉は発達している。左心室は大動脈に血液を送り出 し、右心室は肺動脈へ血液を送る。大動脈は、肺を除いて、全身に血液を送るので、血圧は高く、右心室に比べて、筋肉の厚 さは4倍位厚く、ポンプの主役である。左心房は肺静脈からの血液を受け取り、左心室へ送り出す。右心房は全身の静脈血を 大静脈(上と下の二本)、から受け取り、それを右心室へ送り出す。心房と心室の間、心室と動脈(大動脈と肺動脈)の間に は弁があって、血液の逆流を防いでいる。
 心臓は血液を送り出すポンプの役目を担っている。収縮と拡張を定期的にリズミカルに行っている。左心室から駆出された 動脈血の収縮期圧が脈となって感じられる。正常であれば脈に乱れはない。心筋に縮みなさいと命令をする機構がある。それ を司っているのは刺激伝統系と呼ばれる特殊な組織である。電気的刺激(命令)を受けて心筋細胞は収縮を始める。しかし刺 激がくればいつでも収縮するということではない。収縮したばかりの筋肉には刺激がきても充分に反応出来ない時間がある。 これを不応期と言う。次から次へと間を置かずに命令を出しても動けない。休息が必要なのである。刺激伝導系が正常であれ ば、きちんと間を置いて刺激を出している。刺激伝道系は感情(脳)によっても支配されている。好きな異性が自分の前に来 るとドキドキするのはその一例である。一方では心臓を取り出して神経支配を切断しても心臓は動く。自働能があるから、心 臓移植が可能なのである。
 ところが、刺激伝導系の正常の回路を通らずに、電気的刺激(命令)を発して心筋を勝手に収縮させることがある。心房の 一部に心耳という袋みたいな突起がある。左心耳の中で血液が凝固することがあり、その時に異所性に刺激を出すことがある 。命令が頻繁に出されると、心房筋は頻繁に細かく収縮し、痙攣した様な状態になる。これを心房細動或いは心房粗動と呼ぶ 。細動は収縮の頻度が高く、粗動はその回数がやや少ないものを言う。このときにも心室筋は刺激伝導系の正常の刺激で収縮 運動をしているが、心室筋が不応期にあれば異所性の刺激が来ても収縮しない。しかし不応期を過ぎると、正常のリズムとは 異なる収縮運動が突然発生し、不整脈となる。
 これからが本題である。心房細動が怖いのは、その前提に心耳に血栓のあることが多いことである。そしてこの血栓が剥が れて、左心室から大動脈へ流れると(血栓性塞栓)、肺を除いて身体の何処へでも流れ着く可能性があるということである。 特にこのために脳梗塞になる可能性が高い。そこで、カテーテルを脚の付け根から入れて、心房壁にある異所性の命令箇所( 刺激源)を先端についている電極から高周波電流を流して、源を焼いてしまおうという治療法である。
 自分で不整脈を感じなくても、心電図をとってもらえば分かる。不整脈にはいろいろな種類がある。時に心電図検査を受け て欲しいと思う。(IS


刺激伝導系 心房細動  不整脈  血栓性塞栓  脳梗塞
(No179n;2012/04/13)


医療ニュース・バックナンバー