医療教育情報センター

No182 母子健康手帳が10年ぶりに改訂

 母子健康手帳が平成24年度から10年ぶりに改訂された。主な改訂点は,妊婦やその配偶者が妊娠中に自由に書き込める欄を大幅に増やしたこと、胆道閉鎖症の早期発見のために赤ちゃんの便の色をチェックできる色見本を付けたこと、子どもを感染症から守る予防接種の記録欄を充実させたこと、などである。
 母子保健は生涯を通じた健康の出発点であり、次世代をすこやかに育てるための重要な施策である。戦後の日本の母子保健は、GHQの指令と支援により、公衆衛生の重要な分野として位置づけられた。当時の最も重要な課題は食糧不足への対応と爆発的に増加する人口の抑制であった。これらの状況下、1947年には児童福祉法、保健所法、1948年には予防接種法、優性保護法が公布された。また同年には、戦時中に制定された妊産婦手帳を改定した母子手帳(1966年、母子健康手帳に改称)が発行された。当時の母子手帳は妊婦、出産、児の発育に関する記載がコンパクトにまとめられていた。また食糧の配給に関する記載が全体の1/4を占めていることで、当時の食糧問題の切実さがうかがえる。1965年には母子保健法が公布された。日本では、自分の妊娠を市町村に届け出ることになっている(母子保健法15条)。それに対して母子健康手帳が交付される(母子保健法16条)とともに各種の母子保健サービスの提供が開始されるシステムとなっている。なお母子健康手帳の様式は厚生労働省が定めており、転居により居住地が変わっても適切な母子保健サービスが継続して受けられるようになっている。
 健康診査や保健指導にあたった医師、歯科医師、助産師、保健師は、必要な事項を母子健康手帳に記載するが、乳幼児の保護者も母と子の健康記録を行い、セルフケアに活用することが期待されている。今回大幅に増やした自由記載欄に、自身の体調ならび妊娠中の不安や疑問など、医師や助産師に質問したいことを事前に記入することによって、医療従事者とのコミュニケーションを円滑にすすめることができる。妊婦さん自身も記載を通して体調管理や出産準備を、医師や助産師とともに取り組む姿勢を持つことが期待されている。また出産やかかった病気、予防接種に関する情報は子どもの健康管理に大変役立つ。子ども自身が親になる年頃に、妊娠中に感染すると胎児に影響が及ぶ可能性のあるおたふく風邪などのワクチンを接種しているかどうかの確認をすることができる。
 母子健康手帳は、その時代の科学的知見や変化する習俗に対応して柔軟に変更させることによって、行政による妊娠中からの一貫した母子保健に大きく寄与し続けている。諸外国からも注目されており、英語の他、ハングル、中国語、タイ語、スペイン語などのものも制作されている。(EN


母子健康手帳 母子保健 母子保健法 セルフケア 予防接種
(No182n;2012/06/08)


医療ニュース・バックナンバー