医療教育情報センター

No183 要介護高齢者を減らすには虚弱高齢者を減らすことである

 当センター主催の第10回市民公開シンポジウムは「認知症を考える」というテーマで行われた(平成24年6月16日)。近年の認知症に対する関心の高さを反映してか、多数の方々が参加された。その際、強調したかったことの一つは、認知症の末期は「要介護」になるということであり、それは本人にとっても家族にとっても切実な問題である、ということであった。
 超高齢者社会が到来し高齢者人口は増えつつあるが、いかに要介護高齢者を増やさないようにするかは、高齢者自身のQOLの上でも、また医療経済上も重要な課題である。平成22年度の国民生活基礎調査によると、65歳以上の高齢者で、要介護の原因の第1位は「脳血管障害」で20.1%、第2位は「認知症」で15.8%、第3位は「高齢による衰弱」で14.3%であった。要介護状態の原因が脳梗塞や認知症であることはある程度仕方ないが、「高齢による衰弱」は注目しなければならない。「衰弱による要介護」は年齢が高くなる程増加し、75歳以上の後期高齢者では16.6%、さらに85歳以上になると要介護の第1位となり、25.6%に及ぶ。
 高齢による「衰弱」は、いわゆる「老衰」であり、医学的には「虚弱、frailty」である。これは病気ではなく、老化に伴い種々の臓器の機能低下が起こり、そのため健康な身体に対して脆弱性、vulnerabilityが増加した状態である。老化に伴う機能低下は、臓器に予備能力のない高齢者では容易に機能障害に陥り病気を惹き起こすことになる。
 「虚弱」とは、@栄養低下、A身体能力低下、B筋力低下、Cうつ・活動性低下、D日常活動低下の5項目のうち3項目以上を満たすとき、と定義されている(Fieldら:2001)。1〜2項目が当てはまる場合は、前虚弱状態とみなす。虚弱は必ずしも、健康→前虚弱→虚弱→要介護と一方向に進行するのでなく、早い時期に発見すれば要介護にならず自立に戻る例は少なからず存在する。そのためには「虚弱状態」を早く発見し、それに対応することが大切である。「虚弱」の5項目の目安として、「栄養」については1年で体重が4.5kg以上の減少、「身体能力」については通常の歩行速度の評価、「筋力」については握力の測定、「うつ・活動性」については疲労感評価、「日常生活活動」については外出機会などで評価するが、わが国でも厚労省の介護予防事業(地域支援事業)で、要介護高齢対象者の選定項目を定めて地域で介護予防教室を開いて参加を呼び掛けている。
 病気がなくても老化が進むと身体能力が低下し、筋力も落ち「転倒・骨折」を起こして要介護者となり、そのまま寝たきりとなることが少なくない。老年になっても栄養をとり、適度な運動をし、社会の中で人とのコミュニケ―ションをとって精神活動を行うことが要介護老人にならない鍵である。

NH


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(No183n;2012/06/22)


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