医療教育情報センター

No184 健康寿命と生活不活発病

 厚生労働省は6月1日、介護を受けたり寝たきりになったりせず、制限なく健康な日常生活を送ることが可能な期間を示す「健康寿命」が、22年で男性が70歳、女性が73歳だったとする算出結果を提示した。厚労省は22年の平均寿命を男性が79歳、女性が86歳と推計しており、平均寿命と健康寿命との差は男性で9年、女性で13年ということになる。これは日常生活に制限がある「不健康な期間」で、この差が拡大すれば医療費や介護給付費が増大する。次期健康づくり計画案では、この差を縮小し、高齢者の生活の質の低下を防ぐとともに、社会保障負担の軽減も期待するとしている。
 前報 (No183n;2012/06/22)でも述べられているように、要介護高齢者を減らすには虚弱高齢者を減らすことである。病気がなくても老化が進むと身体能力が低下し、筋力も落ち「転倒・骨折」を起こして要介護者となり、そのまま寝たきりとなることが少なくない。健康な高齢者でも安静状態が長く続くと、心身の機能が低下し廃用症候群(disuse syndrome)になりやすい。低下するのは、筋力低下や関節の拘縮、平衡機能の低下、骨の萎縮といった身体機能の低下だけではなく、心臓や肺の機能も低下し、自律神経の低下が失禁や便秘につながることもある。
 最近の例では、新潟や東北の地震災害のとき、生活が不活発になることから発症することが多く、生活不活発病と呼ばれ注目されている。一般的な疾患では、健康状態が損なわれることにより日常活動や仕事、趣味などに参加できなくなる。一方、生活不活発病では、災害後に仕事や趣味ができず(参加低下)、次第に体を動かす機会が減り(活動低下)、心身の機能低下につながる(大川弥生:MMJ 8:4-7,2012)。
 高齢者は疾患に関係なく、入院すること自体が寝たきりのきっかけとなることもある。病気を治すためにやむをえないこととはいえ、多くの場合は安静を保つことになる。これが廃用症候群の原因になり、病気は治ったものの、寝たきりになってしまったということが起こりうる。
 これまで、医療は病気の治療に大きな成果をあげてきたが、超高齢化社会では、疾患の治療や予防だけでなく、日常生活機能にも目を向けていく必要がある。「病気は治ったが寝たきりになった」のでは、健康寿命を伸ばすことにはつながらないからである。
 医師、患者ともに、「病気のときは安静第一」という固定観念が強い。医師は患者に「してはいけないこと」を指示することが多いが、高齢者には「してもいいこと。したほうがいいこと」を具体的にアドバイスすべきであろう。そのためには、病気だけでなく、病人のことを分かっている必要があり、「かかりつけ医」の役割が改めて見直されるべきだと考える。 (TI


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(No184n;2012/07/06)


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