医療教育情報センター

No185 骨髄異形成症候群 myelodysplastic syndrome とは

 骨髄は血液の中の細胞即ち赤血球、白血球(主に顆粒球)、血小板などの血球を造っているところである。血球の寿命は短い。生まれた時の血球は最早無く、新しい血球に次々と入れ替わっている。木の幹から多数の枝がでるように、未熟な幹細胞から多種類の血液細胞へと成熟する。これを分化(differentiation)と呼ぶ。分化とは他と区別できるということである。成熟した赤血球と成熟した顆粒球は他と容易に区別できる。生まれたばかりの赤ちゃんは将来何になるか分からない。成熟して大人になれば、あの人は会社員、学校の先生或いは大工さんなどと区別できるのと似ている。
 血液細胞は常に入れ替わっているのだから、未熟なものから分化する過程を常に歩んでいる。だからその間に放射線・有機溶剤・化学薬品などへの被爆が起れば異常が起る機会は多い。未熟な組織・臓器から成熟した組織・臓器になる過程を形成(形づくる)という。未熟なある段階で止まってしまったものを低形成(hypoplasia)と呼ぶ。形成が異常に続行して細胞が過剰に増えるのを過形成(hyperplasia)と呼ぶ。しかしこれは正常の成熟過程の道筋の範囲内での話しで、数的・量的に正常範囲を超えた場合である。異形成(dysplasia)とは、正常の成熟過程を一本道と仮定すれば、その道から外れて別の道へ進んでしまうものを指している。それが骨髄造血細胞に起った病変を骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome)と呼ぶ。因みに全く別の細胞が勝手に増殖するものを腫瘍(neoplasia、新生物)と言う。neo-は新しいという意味である。癌はその代表であり、白血球にそれが起れば白血病である。
 骨髄異形成症候群とは、骨髄及び末梢血液における赤血球、顆粒球及び血小板の2乃至3系統が種々の組み合わせで異常を呈するもので、骨髄では血球は正常に造られていたり、或いは過剰に造られているのに末梢血液では貧血や白血球の減少或いは血小板の減少が起こり、骨髄では未熟な骨髄芽球がやや増加(30%以下)する病態で、組みあわせによって5型に分類されている。これの分類は血球の形態異常を観察して主に血液内科医が行い、治療法(顆粒球コロニー刺激因子、化学療法、骨髄移植など)の選択に際して重要である。この病態は急性骨髄性白血病に移行することがあり、以前には前白血病とか、冬眠白血病とか、非定型白血病と呼ばれていたものが含まれている。この疾患は高齢者、男性に多く、日本における年間発生数は約1,000名と言われている(モダンフィジシャン 特集「骨髄異形成症候群」17巻10号 清水弘之:骨髄異形成症候群の疫学による)。貧血や白血球減少(感染症を起こし易い)或いは出血が止まり難い状況がある時はこの症候群の可能性も考慮に入れて血液内科専門医に相談することをお勧めする。(IS


低形成 過形成 異形成 骨髄異形成症候群 新生物
(No185n;2012/07/20)


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