医療教育情報センター

No188 現代社会と「うつ病」

 厚生労働省の患者調査によると、うつ病患者数は1996年には43.3万人、1999年には44.1万人とほぼ横ばいであったが、その後2002年には71.1万人、2005年には92.4万人、2008年には104.1万人と9年間で2.4倍に増加している。うつ病は「こころの風邪」ともいわれるように、誰もが罹患する可能性があり、特にバブル経済崩壊後の長期にわたる経済的不況状況や、職場環境にストレスが多くなったことが影響しているといわれている。一方、うつ病が社会的に知られるようになり、精神科を受診する軽症者の受診が増えている(8月31日付けの朝日新聞には結婚を望みながら頑張ってもかなわず、疲れ切って「うつ」の症状を訴える患者向けの「婚活専門外来」が紹介されている)。
 うつ病は気分障害(mood disorders)の一種に分類される。人間は感情の動物であると言われている。喜怒哀楽は,私たちの生活の営みに伴い生じてくるもので,人間らしさの根幹の一つである。しかしこの感情が、普段私たちが体験する出来事への反応として、はるかに強く表れ過ぎたり、出来事との無関係に感情の変化が生じることがある。この状態が継続しその程度が著しい場合には、社会生活に支障をきたし、自らが苦しんだり、周囲の人々との間に問題が生じる事態となる。これが気分障害の基本的特徴である。うつ病の主な症状として抑うつ気分、行動・思考の制止、不安・焦燥感など気分・活動性の障害や自尊心の低下、否定妄想、希死念慮(死んでしまいたいと死を願う気持ちを生み出す)などの認知パターンの障害の他、睡眠、食欲、性欲も障害される。これらの症状には日内変動がしばしばみられ、朝最も調子が悪く夕方は比較的よい。
 発病状況として愛する者との別離、病気、仕事や学業での失敗などの不幸な出来事のみならず、昇進や新居への移転、結婚など一般的には喜ばしいものであっても、それまでの生活パターンを変えうるものはストレスとなる出来事になるとされている。さらに近年は 雇用状況の悪化や社内の人間関係の脆弱化、職場のパワーハラスメントの増加(職場のパワーハラスメントに関する相談件数が、2002年度に比べ昨年度は約39,400件と6倍に増加)など、職場環境の悪化がうつ病発症のリスクとなるケースも増えている。
 うつ病は自殺の危険が高い。特に初期と回復期に高いといわれている。自殺は「防ぐことのできる社会問題」(WHO)といわれている。そのためにも、まず仕事を休んでゆっくりと休養をとることが重要である。「仕事をこなす量が減る」「判断が遅れる」「仕事の効率が悪くなり、指定された期限に間に合わない」「小さなミスが多発し、それを気に病む」「同僚らとの会話がおっくうになる」などのサインが現れたら、すみやかな精神科への受診が必要である。(EN) 


高齢認知症 予想外増加 アルツハイマー病 診断の進歩 増悪因子
(No188n;2012/09/14)


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