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No192 iPS細胞を使った臨床研究

 2012年のノーベル医学生理学賞に決定した山口伸弥教授のiPS細胞を使った臨床研究の準備が進んでいる。
 神戸市にある理化学研究所発生・再生科学総合研究センターでは11月19日、倫理委員会を開き、高橋政代プロジェクトリーダーらの研究チームが申請していた人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った臨床研究について適正と判断し、承認した。この研究はiPS細胞から作った網膜の細胞シートを、加齢黄斑変性で視力が低下した患者に移植し、異常が生じないかなどを調べ、主に安全性を確認する。
 移植を実施する先端医療センター病院の倫理委員会でも21日に審査され、結論が出そろった後に厚生労働省に審査を申請。問題ないと判断されれば、2013年度中に移植が実施されるとみられる。臨床研究が実施されれば世界初となる見込み。
 iPS細胞から心筋細胞を作り、重症の心不全患者に移植する再生医療が期待される中、慶応大などの研究チームは作製した細胞から未分化のものを取り除き、心筋細胞だけを効率的に選別する技術を開発した。11月15日付の米科学誌セル・ステムセル電子版で発表した。
 移植用の心筋細胞に未分化の細胞や心筋以外に分化した細胞が含まれると、腫瘍化する危険がある。新しい方法は安全性の高い心筋細胞を効率的に作れるため、臨床応用に向け弾みになるという。
 慶応大医学部の福田恵一教授とアスビオファーマ(神戸市)の服部文幸主任研究員らは、心筋細胞とiPS細胞のエネルギー源の違いに着目。それぞれの細胞内でどのような物質がエネルギー源として使われるかを調べた。
 激しく増殖するiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)では、大量のブドウ糖を消費して乳酸を排出するのに対して、心筋細胞はブドウ糖の消費が少なく、乳酸を取り込んで活動可能なことが判明。ブドウ糖を除いて乳酸を加えた培地を用意し、ヒトのES細胞から作った未選別の心筋細胞を約1週間培養すると、心筋以外の細胞が死滅し、最大純度99%の心筋細胞が得られた。マウスを使った移植実験ではES細胞で9割、未選別の細胞で4割に腫瘍が発生したが、選別すみの心筋細胞は腫瘍が全く発生しなかった。(SS


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(No192n;2012/12/07)


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