医療教育情報センター

No200 財政破綻した夕張市医療再建が教えるもの

 2006年6月、夕張市の財政破綻が明かになり、夕張市立総合病院も退職者が続出して崩壊同然となった。誰も引き受け手のいなかったこの病院を地域医療の再生に取り組んでいた一人の医師が診療所として引き継ぎ、たった5年間で財政的のみならず、質的にも予防医学を重視した医療に再建した(村上智彦:医療にたかるな 新潮新書 2013)。村上医師はこの間、行政、既得権益、住民の依存体質などさまざまな相手とずっと戦ってきた。  なぜ、戦って改革が実現したのか。そのルーツは彼が薬剤師のとき、適切で副作用の少ない薬を使うよう医者に進言したところ、「薬剤師の分際で何を言うか!医者になってからものを言え!」と一喝されたことにあると筆者は考える。あまりに頭に来た彼はその後、医者に転身する。  彼の改革は医師の権限委譲を推し進め、医師、看護師、介護職がフラットな関係を築き、メンバー全員がプロ意識を持って、それぞれの能力を発揮できるようにしたことである。もう一つの改革のポイントは、予防医学を徹底して病気そのものを減らすために、一人ひとりの患者とじっくりコミュニケーションを取り、健康指導を徹底するようにしたことである。  実は、夕張こそが「日本の縮図」なのである。日本の人口は1億2千万人、夕張市の人口は1万2千人。日本の国債残高は680兆円(現在は1000兆円)で、夕張の借金は630億円。夕張は、人口と借金の割合が日本のほぼ1万分の1になっている。また高齢化率は日本の23%に対して、夕張市は44%。地域経済の疲弊、少子高齢化、過疎化、教育問題、大衆迎合政治、住民の依存体質……まさに高度成長期に日本に蓄積されてきた「歪(ひずみ)」が、夕張において「財政再建団体」という形で具現化した。つまり、夕張で起こっている問題は、近い将来、日本各地でも起こりうるといえる。  その意味で、村上医師は単に夕張の医療を再建した壮絶な戦いの記録にとどめず、不満だけを訴えて、自らの手で健康と安心を守ることを忘れた日本人に、自分の事として、わが国全体の問題として捉え、一人ひとりが自立した個人として行動することを訴えている。 (TI


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(No200n;2013/05/03)


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