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乳がんの遺伝子検査
No204n (2013/07/26)
 がん患者が家系内に多くいる状態を「家族集積性がある」といい、このがんを家族性(遺伝性)がんと呼んでいる。家族性がんの特徴は、@若年に発症する、A多くの臓器に発症する、あるいは両側性である。 家族性がんはがん関連遺伝子が関与するが、遺伝形式は常染色体優勢遺伝がほとんどであり、患者の血縁者、とくに親子・兄弟は50%の確立で発症する可能性が高い。主な家族性がんが発病する臓器として、乳腺、卵巣、子宮内膜、大腸、骨、皮膚、脳、甲状腺、腎、副腎、網膜などが知られている。
 家族性乳がんに対する遺伝子検査を発病前に行って陽性と分かった時、発端者(医療機関を訪れた最初の患者)は、今後の対応について医師とよく相談することが重要であるが、もう一つの問題として、その遺伝子情報を基に血縁者も遺伝子検査を行うかどうかである。この情報は家族性がんの易罹病性の予見のみならず、世代を超えて一族に係わる個人情報であることから、情報の保守管理とプライバシーの保護という重要な問題が関与して来る。その意味で遺伝カウンセリングが必須のこととなる。遺伝子型―表現型相関を基に将来のがんの経過や推測される予後を理解し、治療方針を選定することになる。
 本年5月、米国のある女優が家族性乳がん・卵巣がん症候群のBRCA1がん抑制遺伝子を持っていることが分り、乳がんが発病することを予防するために乳房切除を公表して人々の注目を集めた。BRCA1はBRCA2とともに最も研究が進んでいるがん遺伝子の一つであり、BRCA2は乳がんだけを起こすことが知られている。米国では乳がんと診断されたのちに遺伝子検査を受けて陽性と分かると、がんのある乳房だけでなく、健康な反対側の乳房まで切除する人もいるという。
 疫学調査ではわが国でも欧米人と同じ割合でこの遺伝子を有していることが分っている。日本人の乳がんの5%は、遺伝性乳がんであると言われている。日本でもこうした遺伝子検査を受けることの出来る医療機関はあるが、健康保険は使えず、自費診療である。問題は陽性と診断されたとき、予防的切除をするか、娘・姉妹をどうするか、よく考えてから検査を受けることが大切である。自分の意志で検査を受けることは自由であるが、その結果を親子・兄弟までが知る自由はあるか、知らせるべきか、よく考えねばならない。「知りたくない権利」もあることを知っておくことも大切である。
NH
   乳がん | 家族性(遺伝性)がん | 遺伝子検査 | BRCA | 遺伝カウンセリング
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