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病気の原因に曝されれば、直ぐ発病という訳ではない
No209n (2013/11/29)
 所謂伝染病の症状は複雑だが、原因(initial factor)は通常一つである。コレラという病気の原因はコレラ菌である。赤痢のうちの細菌性赤痢の原因は赤痢菌、アメーバ性赤痢の原因は赤痢アメーバである。麻疹の原因は麻疹ウイルスである。その意味では簡単明瞭である。ところが原因究明が簡単そうに見える感染症でも、感染即発病とならないものがある。それまでは麻疹が発生したことのない離れ島に麻疹ウイルスを撒くと住民の殆ど全員が発病するのに日本脳炎はウイルスを撒いても1000人に一人位しか発病しないということを学生時代に公衆衛生学で習ったことがある。計算上、前者の発病率は100%、後者のそれは0.1%となる。ヒト結核菌に感染しても結核症と言う病気を発病しない人が居る。いや寧ろ発病しない人の方が多い。私は小学校のときにツベルクリンが陽性で、知らないうちに結核菌に感染していたが、結核症という病気になったことはない。このようなことは生まれた時からもっている抵抗力とか自然免疫のお陰である。結核菌が増えるための分裂増殖の期間(generation time)は大腸菌などと比べる長いがハンセン菌(らい菌)に比べると短い。結核菌は感染しても暴れ出さずにじっと生き続けているらしく、高齢になって抵抗力が減弱すると結核症が発症することがあり、これを老人性結核と呼ぶ。
 一部の癌はウイルスが原因であることが分かったが、そのウイルスに感染したからといっても数年から数十年後に全員が癌になるわけではない。臨床的に癌と認識できるようになるためには或る程度の大きさにならないと認識できない。細胞1個に遺伝子変異が起き癌化してもその細胞がNK細胞(Natural Killer Cell)によって退治されてしまうかも知れない。しかし人類はその現場を直接見ることはできない。超ミクロの世界だ。癌細胞が例え増殖することができても、癌が更に発育するためには酸素や栄養が必要であり、それには癌というものの固まりの中に補給路である血管が生まれなければ癌は育たない。例え育っても癌の居る周囲の微小環境の中で育ち続け、更に既存の組織の中へ入り込み(浸潤)、そこでも生き続け、更には転移するためにはリンパ管や血管の中に侵入してリンパ液や血液の中で生き続け、更には流れついた先でリンパ管や血管の外に出て、新たな環境(例えば、リンパ節、肺、肝臓などの転移先)で生存し続けなければならない。癌細胞も生存し、子孫を増やすのは大仕事なのである。癌の多段階説である。それで様々な種類の抗癌剤が研究され、開発されているのだ。
IS
   感染症発癌 | 癌の多段階説 | 発病率 | NK細胞
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