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オフセット印刷工の胆管がん
No210n (2013/12/13)
 昨年来「胆管がんで労災申請・認定」という記事が度々新聞に載った。度々というのは、2012年3月に大阪の印刷会社元従業員3人の申請を発端に、NHKなどでも報道され、さらに厚生労働省の調査で計67人が若くして発病しうち37名の死亡が報告されて以来、断続的に報道されたからである。
 胆管は、肝臓で生成された胆汁を集めて胆嚢にたまり膵管と合流して12指腸に注ぐ管で、そこにできた胆管がんは黄疸や肝臓検査等で発見される。日本では高齢者に多く年間約1万3千人が死亡している。 印刷工の集団発症は先進国でも例がなかったため、厚労省は専門家の検討会を設置して業務との因果関係を分析し業務による発病が濃厚であると2013年3月に発表した。
 疑われたのは、オフセット印刷工程で、頻繁にインキを拭き取るために大量に使用された1・2ジクロルプロパンとジクロルメタンであった。模擬実験では作業者が数百ppmのジクロルプロパンやジクロルメタンにばく露された可能性があり、疫学分析では発端となった当該印刷工程従業員延べ70人のうち16人(全員男性)が胆管がんを発症し、発症時の年齢は平均36歳(25〜45歳)、7人の死亡時の年齢は平均37歳(27〜46歳)、同作業従業員の胆管がん罹患率は日本人男性平均罹患率の1,200倍と算出され、また研究論文の分析により発がんメカニズムとして両物質の大量被ばくにより胆管上皮細胞内で代謝された中間代謝物が細胞のがん化を引き起こしたと推論している。労災申請案件の業務上外の判定は個別に検討中で、2013年9月現在延べ申請75件中22件が業務によると認定された。また厚労省は関係法規則を改正して管理を強化し、日本産業衛生学会はジクロルプロパンの許容濃度を米国の10分の1に厳しくし発がん物質に指定した。
 世界の産業界では約6万の化学物質が製造・使用されているが、うち約4万には毒性情報があり、日本では約120が特別管理物質に、約1400が法的指導等の対象となっている。また化学物質の管理に関する法律も日本には約20ある。しかし、食品添加物をはじめ化学物質の安全管理体制は、先進国においても未だ極めて不完全でこれからも一層強化する努力をしなければならない。本稿の胆管がんはまさしく人災で、失敗の歴史が繰り返されたわけであるが、社会の変化が激しい現在、さらに環境の安全化、企業や国民の安全意識の涵養の重要性を改めて認識させられた例といえよう。
RT
   胆管がん | 発がん物質 | オフセット印刷工程 | 1・2−ジクロルプロパン | 大量暴(ばく)露
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