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ケリー・ターナー『がんが自然に治る生き方』
No246n (2015/09/18)
 がんの治療方法としては、手術・抗がん剤・放射線治療の三大療法が標準治療とされ、治療が奏功せず末期状態になった場合は、余命3〜6カ月と医師から宣告されることが一般的である。
 ところが、患者がその後、いろいろなことを試みながらがんを克服して生き続け、がんが消えてしまうことがある。この自然治癒という現象について医師は全く関心を示さず、たまたま起きた例外だと黙殺してきた。
 病気になった患者一人ひとりの違いを認めず、同じ症状・病気には同じ治療法を行うことを常識にしてきた西洋医学の医師には当然かも知れない。しかし、たまたまという理由は存在せず、患者それぞれが生き延びるために取り組んだ事実があるはずである。
 著者のケリー・ターナー博士(Dr. Kelly A. Turner 腫瘍内科学領域の研究者。カリフォルニア大学バークレー校にて博士号取得)は、がん専門病院で患者のカウンセラーをしているとき、医学的には治癒不能といわれたがんが自然治癒する現象に興味を持った。「劇的な寛解 Radical Remission」と名づけた彼女は、医学雑誌を調べてみると、1000例以上の症例報告が掲載されていた。しかし、いずれも医師や心理学者の観察によって書かれていて、「治った人」本人の視点を含むものはほとんどなかった。
 なぜがん患者は回復したのか。必ず理由がある。黙殺すべきではないと考えた彼女は、全く科学的にメスを入れられていないこのテーマを解明するために、「劇的な寛解」事例を報告した1000本以上の医学論文を分析し、日本を含む世界10カ国で寛解者と治療者100人以上にインタビューを敢行した。
 その結果、がんの自然治癒を体験した人々には、寛解に至った要素として75項目があり、このうち「9つの共通する実践事項」が認められた。本書では9項目それぞれについて章を立て、自然治癒を経験した人々の語りを元に各章ごとに詳しく解説し、具体的な実践方法も記している。(『がんが自然に治る生き方』ケリー・ターナー (著), 長田美穂 (翻訳) プレジデント社 2014)
余命宣告から「劇的な寛解」に至った人たちが実践しているのは次の9つである。
・抜本的に食事を変える
・治療法は自分で決める
・直感に従う
・ハーブとサプリメントの力を借りる
・抑圧された感情を解き放つ
・より前向きに生きる
・周囲の人の支えを受け入れる
・自分の魂と深くつながる
・「どうしても生きたい理由」を持つ
 興味があるのは、9つの項目のうち、身体にかかわることがたった2つしかなく、残りの7つは、感情や精神にかかわることだったことである。このことは、彼らががんをきっかけに「生き方の変革」を遂げたということもできる。
 著者は、「九つの要素は、がんからの劇的な寛解が起きた理由についての仮説であり、まだ科学的に十分裏付けされた理論ではありません。この九項目によってがん患者の生存率が上がると断定するには、データの量的分析や無作為な臨床試験が必要で、残念ながらあと何十年もかかるでしょう」と述べている。
 しかし、がんから異例の治癒を遂げた人々の体験を知るだけで、人間の持っている自己治癒力がいかに奥深いかを知ることができ、進行した末期がんになっても自ら行動を開始する勇気をあたえられるのではないだろうか。この地球上には同じ人は二人といない。つまり健康への処方箋には同じものは存在しないということを考えれば、自分自身でこの本から自分にあった方法を選ぶのが正解といえる。
 突きつめれば、「人それぞれ」こそ、がん生還者の語った答えなんだということがわかる。要は、その人が「自分の生き方」を見つけたのである。どうして自分はがんになったのか。どうして生き続けたいのか。生きる道があるなら、そのために何ができるのか。
 本書は生き方論であると同時に、心の鍛え方のノウハウが詰まっており、末期がんの患者だけでなく、難病で苦しんでいる患者や健康に不安を抱える人のためにもなる名著だと確信する。
TI
   末期がん三大療法自然治癒自己治癒力 | 生き方論
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