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労働者の「過労死等」とストレスチェック
No248n (2015/10/16)
 平成26年に「過労死等防止対策推進法」が制定され、また「労働安全衛生法」が改正された。いずれも労働者の健康、特に「こころ」の健康にかかわる法律である。  過労死等とは、「業務における過重な負荷による脳血管疾患若しくは心臓疾患及びこれらを原因とする死亡や、業務における強い心理的負荷による自殺若しくは精神障害」と定義されている。後者の改正では「事業者は労働者に対し心理的な負担の程度を把握する検査(ストレスチェック、会報28号参照)を行わなければならない」等が追加された。
 平成26年度の労働災害統計では、脳・心臓疾患の労災認定件数は277件(認定率44%、うち死亡121件・認定率49%)で前年より減少、一方、精神障害は497件(認定率38%、うち未遂を含む自殺は99件・47%)で、前年より47件増で過去最多となった。
 増加が注目されている「うつ」(会報26号参照)などの精神障害・自殺の件数が多い業種は、道路貨物運送業、社会保険・社会福祉・介護事業、医療業、飲食店、事業サービス・情報サービス・小売業、職種では専門職、管理職、事務、販売、サービス職、運送・機械運転、生産工程従事者である。また、年齢は40歳代、30歳代、20歳代、50歳代の順に多く、残業時間は100時間以上が35%、40時間未満が31%であった。心理的負荷の内容では、事故や災害の体験・目撃、仕事内容・量の変化、対人関係、極度の心理的負荷、などが多い。因みに、内閣府統計の国全体の自殺者は、24年から減少し26年は2万5千余人で、その原因・動機は勤務問題が12%、経済・生活問題が22%、健康問題が68%であった。
 過労死等が多いのは、長時間労働、雇用条件、労働の質、企業及び社会の風土、労働者の意識と生活、等の相互作用の結果と推測される。労働者の60%以上がストレスがあると回答する状況も考え合わせると、業務によるストレスの増加と、その解消に役立つ職場や家庭の支援が少ないことを示している。
 労働法規で実施が義務づけられた世界初のストレスチェックは、過労死等の予防とストレスの低減が目的であるが、人権や個人情報保護などの観点から実施の過程で様々な条件や留意点が示されている。回答の信頼性、実施者の選択、膨大な対象事業場と従業員数、結果の解析・評価、産業医等の負担、高リスク希望者への面接指導、事後措置、事業者の措置、など、様々な困難や懸念もある。日本人の知恵と実行力が試されるような、世界が注目するストレスチェックである。科学技術と表裏一体の産業の進歩によって増加する労働によるストレスの低減へ貢献できることを念じたい。
RT
   過労死うつ精神障害 | ストレスチェック | 労働時間
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