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高齢者を支える −セルフ・ネグレクト−
No257n (2016/03/04)
 一人暮らしの高齢者の中には、生活に関する能力や意欲が低下し、自分で身の回りのことができないために、自身の健康や安全が侵されている状態に陥る人々がいる。客観的にみると本人の人権が侵害されている事例があり、このような状態は「セルフ・ネグレクト(自己放任)」と呼ばれている。ネグレクトとは、親や介護者が子どもや介護が必要な高齢者などに対して、育児や世話、介護を「怠る」「放棄」することをいう。児童や高齢者の虐待の一種である。セルフ・ネグレクトとは成人が通常の生活を維持するために必要な行為を行う意欲・能力を喪失し、自己の健康・安全を損なうことをいい、本人の意思による場合と、認知症や精神疾患などで判断力や認知力が低下する場合の両方が含まれる。セルフ・ネグレクトはネグレクトと同様に(他者によるものか、自分自身によるものかの違いはあるが)、結果的には心身の安全や健康が脅かされる状態に陥ることから、人権が侵害される問題として捉えられている。そのために近年、調査研究や介入の方法などが模索されている。
 2011年の内閣府で行われた実態調査では、セルフ・ネグレクト状態にあると思われる 高齢者の推計値は約12,000人とされているが、これはまだ氷山の一角に過ぎないと考えられている。2012年に発表された米国での大規模調査では高齢者の約9%にセルフ・ネグレクトが存在するとされている。 セルフ・ネグレクトの原因には@家族・親族・地域・近隣等からの孤立 Aライフイベントによる生きる意欲の喪失 B世間体・遠慮・気兼ねによる支援の拒否 C家族を介護した後の喪失感や経済的困難 Dサービスの多様化・複雑化による手続きのむずかしさ  E認知症、精神疾患などによる判断・認知力の低下 F経済的困難などがあげられている。
 一人暮らしの高齢者でセルフ・ネグレクト状態にある人は、孤独死につながる可能性が高いことが指摘されている。早期発見と対応が必要であるが、セルフ・ネグレクトは「拒否」のために、発見が難しい。リスクファクターとして@住環境が極端に不衛生(家の前や室内にごみが散乱した中に住んでいる、掃除をしないなど)A身体が極端に不衛生(風呂に入らない、失禁があっても放置するなど)B適切な食事を摂らない C必要な医療・介護・福祉サービスの拒否(病院に行かない、支援の繰り返しの拒否など)などがあげられている。リスクファクターを持つ高齢者を把握し、医師・保健師などによる定期的な見守りが必要とされ、自治体ごとに取り組みが行われている。
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