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総合診療専門医育成をめぐる課題
No263n (2016/07/08)
 わが国では、医師が開業するとき、標榜する診療科名は自由である。内科、小児科、放射線科などの複数科は普通にみられる。専門医の認定はこれまで、各学会が独自に行ってきたが、専門医の質をたかめるために新たな制度が平成29年度より始まる。新制度では、中立的な機関である日本専門医機構が専門医の養成と認定にあたる。
 内科、外科、小児科など19の基本領域に、さまざまな疾患を併せ持つ高齢者の増加に対応するために、新たに総合診療科が加えられた。総合診療専門医の特徴は、「扱う疾患と機能の広さ」であるともいえる。
 明かになった研修目標では、6つのコアコンピテンシー(修得すべき基本能力)として、人間中心のケア、包括的統合アプローチ、連携重視のマネジメント、地域志向アプローチ、公益に資する職業規範、診療の場の多様性が挙げられている。これをさらに集約すれば、患者・家族に軸足を置いて、地域に密着し、関連するスタッフ・施設と連携しながら自ら足を運んで問題解決に当たる医師といえるであろう。
 こういう医師は得がたいのではないか。画餅に終わらないかと先行きを懸念する声があがるかも知れない。実は、こうした医師は長年、地域の診療所や病院において志のある医師が自力で技能を磨き、地域のニーズに応じて幅広い疾患や機能に対応してきたのである。ということは、総合診療医にとってもっとも重要なのは専門医資格の有無ではなく、総合診療を目指したいという動機の強さともいえる。
 平成32年、晴れて総合診療専門医が登場すれば高齢者医療に関わる諸問題が解決に向かうわけではない。地域に密着して活動する医師数がどのくらいになるかが問題である。「焼け石に水」にならないよう祈るような気持ちである。
 目先の問題解決にはならないが、総合診療を目指す医学部学生を増やし支援する方策も必要であろう。例えば、医学部入試の段階から地域で総合診療を目指す学生を枠を決めて採用するとか、奨学金制度を設けるとか。自治医大方式を拡大するのである。ちなみに、30年以上前、私が臨床研修に関わった60歳前後の二人の医師が人生最後の働き場を臨床に求めて、改めて地域医療振興協会の医師再研修プログラムを1年間受けた後、現在、診療所と病院で地域医療のために活躍している。
TI
   新専門医制度日本専門医機構総合診療専門医自治医大方式 | 地域医療振興協会
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