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国民医療費40兆円が意味するもの
No271n (2016/11/11)
 厚生労働省は、平成26年度国民医療費が40兆8,071億円に達したと発表した。 「国民医療費」とは、年度内の医療機関等での傷病の治療に要する費用を推計した値で、診療費・薬局調剤費・入院時食事療養費・訪問看護療養費・移送費を含むが、正常妊娠・分娩及び健康診断・予防接種・義眼義肢等・患者負担の差額分・介護保険適用分の費用は含まない。
 40兆8,071億円の内訳は、制度区分別では医療保険給付分が47%、後期高齢者医療給付分が33%、患者負担分が12%で、財源別では公費が39%、保険料が49%(うち被保険者負担が28%、事業主負担が20%)である。診療内容別では医科医療費が72%、歯科医療費が7%、薬局調剤医療費が18%、食事・訪問看護等医療費が4%、年齢階層別では65歳未満が41%、65歳以上が59%(うち75歳以上が35%)である。疾患別では65歳未満では新生物・循環器疾患・呼吸器疾患・精神や行動障害・腎尿路生殖器系疾患の順に、65歳以上では循環器・新生物・筋骨格系・損傷中毒等・腎尿路系等の順に高額となっている。人口一人当たり医療費は、全人口で年32万円だが、15〜19歳が最も少なく7.6万円、65歳未満は18万円、65歳以上は72万円(うち75歳以上は91万円)となっている。都道府県別では一人当たり28〜42万円に分布し、全国平均を上回る府県が27ある。
 医療費を含む同年の「社会保障給付費」総額は112兆1,020億円、うち医療費は36兆3,357億円(32.4%)、年金は54兆3,429億円(48.5%)、福祉その他が21兆4,234億円(19.1%)で国民総所得の32.1%(2011年)を占め、フランスの42.1%、スウェーデン38.3%、ドイツ34.7%に次いで多い。
 一方、国の平成28年度「一般会計歳出予算」総額は96兆7千億円で、うち33.1%が社会保障費、24.4%が国債費であり、歳入の40%が将来世代の負担に頼る国債等であると説明している。このような状況について新聞などは、このままでは世界に冠たる日本の医療保険制度の持続が危ぶまれると報じている。
 上記の諸数字はいずれも正しい。しかし、数字上の不一致又は不整合は、例えば国家予算では一般会計の約4倍(重複を除くと2倍以上となる)の特別会計等があること、それらの中で複数年度に及ぶ歳入や歳出、保険料、国債からの借り・繰り入れ、財務管理省庁と統計の違い、などによるものと説明されている。国民医療費40兆という数字だけでなく、各種予算区分や国の経済状態、あるいは社会保障給付などとの関係の中で考えるべきであるが、一般の素人には複雑難解で理解しにくい。
 国の予算に占める医療費と社会保障費の割合が大きいことは、国の豊かさを示している。しかし国民所得や国内総生産とのバランスなどでみた財政の持続可能性を考えると、日本の現状に不安を感じることが多いことも頷ける。最近30年間は、国民医療費は毎年平均で約3.3%ずつほぼ直線的に増加しており、それを支える国内総生産や国民所得の平均伸び率が減少している現実をみると確かに不安である。高齢者に多くの医療費がかかり、学童生徒や若年層で少ないことも理解できる。都道府県別地域差は、医療資源の違い即ち医療機関・人材・診療機器等の質と量、年齢分布、受診の利便性などを反映している。公定価格制でありながら市場原理にさらされて増加している薬剤費率、介護保険給付費の影響、国の医療政策・戦略とそれに対する国民の理解度や医療満足度あるいは過度の期待、将来の受療行動の在り方、など、国と国民双方の知恵が問われる。 
RT

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