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細胞の壊死(ネクローシスnecrosis)と自死(アポトーシスapoptosis)
No274n (2017/02/10)
 本稿は、一般の方が求めている医療に関わる知識とは無縁のものと思われるかも知れない。しかし病気は人間に発生するものであり、その人間が持つ生命という神秘的なものの根源的な基本に近づかねば、病気の複雑さを理解し難い。
 外傷、毒物、ウイルスや細菌などの感染や血液循環の異状で起こる細胞や組織の死を“壊死”と呼んでいる。壊死が起こればその細胞は生き返ることがない。言わば細胞の“他殺や事故死”である。ところ“アポトーシス”は、それぞれに宿命的に決められた“自殺”である。
 血液の赤血球は生まれてから死ぬまでに約120日かかると云う。現在私たちが持っている赤血球は生まれた時のものではない。私は顕微鏡で病変部を見る病理医・病理学者であるが、生検を見ていた時、上皮細胞の核が濃縮し金平糖のような形に縮んでいるのを時々見たことがある。凡人の悲しさ、変性のためと思い込んで重視していなかった。後にこの現象を細胞が“自死”するものでありapoptosis(剥離して落ちるの意)と名付けた人がいる。Apoptosisはprogrammed cell death(遺伝子にプログラムされている細胞死)とも呼ばれている。遺伝子は鎖のような形で、その端に“telomere”と呼ばれる部分(tel-はtelephoneのtel, mereは節のこと)があり、それが次第に短くなり、その端っこの部分が無くなるとその細胞は死ぬそうである。
 大隅良典先生がノーベル賞を受賞したオ−トファギ−auto-phage (自分で自分を食べる)は、細胞が不要になりつつある代謝産物を分解し、お掃除をする仕組みである。この機構が上手くいかなくなったものの代表がAlzheimerアルツハイマ−病で、この病気は脳の神経細胞にamyloid(類澱粉:澱粉の如き染色反応を呈するが澱粉とは異なる多分子結合体)が溜まり死に至るもので、このオ−トファジー機構が上手く働いていないらしい。この病気の治療法は先人たちの基礎科学の上に載って急速に進むだろう。

 以上のことを病気との関係と将来の展望を込めて筑波大学 村上和雄先生が産経新聞 平成28年(2016) 12月7日版の「正論」欄に分かり易く述べられている。
IS

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