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新しい診療理念

一過性脳虚血発作TIA (Transient Ischemic Attack)
No108r (2013/10/18)
 脳の中で局所的に動脈血の血流減少(虚血)が起こって片麻痺などの症状が突然起きるが、それは短時間しか持続せず後遺症を残すことなく回復する発作のことをいう。発作の時間は数分から十数分のことが多い。発作は繰り返すこともある。しかし麻痺などの症状は持続しないことが脳梗塞症(脳軟化)との根本的な違いである。梗塞とは、動脈が閉塞して酸素が供給できなくなり、その潅流領域に不可逆的な壊死が起こるものを言う。脳は類脂質(固形の蝋)が多いので壊死になると液状の脂質(油)に変質する。それで脳軟化とも呼ばれている。心筋は蛋白質が多いので壊死になっても軟らかくはならない。従って心筋軟化症という言葉は無い。
 原因は同じ動脈の閉塞であっても、一過性虚血発作は動脈の一過性の閉塞であって、広範囲の組織壊死を生じないものである。脳の動脈は、頸動脈−内頸動脈系と椎骨動脈系とに分けられるが、両者は脳動脈輪(WillisのCircle)で互いに連結しているが、症状は原因動脈によって異なる。頸動脈系であれば、片麻痺、半身の知覚鈍麻、一過性に目の前が暗くなる、失語症などが起こり、椎骨動脈系であれば、めまい、複視、運動失調、嚥下障害、同側性半盲などが起こる。動脈閉塞の原因の多くは、粥状動脈硬化症で、頭蓋の外にある比較的太い動脈、例えば総頸動脈に動脈硬化が起こり、そこで血が固まり(血栓という)、その一部が剥がれて動脈のなかを流れて(微小血栓性塞栓)脳の末梢の細小動脈で一時的に血流を遮断するために起こる。血栓が生じてもそれを溶かす線溶現象が起これば症状は持続しない。発作が消えても、源である上流に粥状動脈硬化は残っているので、後に脳梗塞が起こる率が高い。一過性脳虚血発作は脳梗塞の警告と考えて注意をすることが肝要である。とくに発作後の約1か月以内は高率なので、受診して原因動脈を明らかにすること、抗血小板薬(血小板の凝集は血栓形成の一因子)の服用などを考慮すべきである。血栓→血栓性塞栓→動脈閉塞の経路のみではなく、動脈の攣縮(病的な過度の収縮)によって起こることもあり、これをdynamic TIAと呼ぶ。
IS
   一過性脳虚血発作脳梗塞血栓塞栓動脈硬化
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