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向精神薬の大量・多剤投与への批判
No112r (2014/03/21)
 日本の精神科医は、薬を多く出すという批判がある。本来、精神科の治療には薬物療法とカウンセリングなどの心理療法があるが、心理療法は手間がかかり、専門家のいる施設も少ないため、容易に薬を出す精神科医療機関が多い。しかも精神科の病気は、内科の糖尿病、高血圧などと違って、薬の効果が数字で示されることはなく、患者の自覚症状による「訴え」だけが頼りであるから、効果の判定は難しい。それだけに精神科医師は、容易に薬を変えたり、その量を増やしたりする。
 重い不眠症に使われるバルビツール酸系睡眠薬は、薬によって大量飲むと死亡することがあるので、今日では推奨されなくなった。ベンゾジアゼピン系薬は、不安、不眠、焦燥感(イライラ)などによく用いられるが、依存性が強く使い続けると薬を辞め難くなる。通常は4週間程度を目安とするが、日本では半年、1年と長期服用は珍しくない。日本のベンゾジアゼピン系睡眠薬の人口当たり使用量は世界一といわれ、米国の6倍である。
 こうした精神科の薬を一度に大量服用した患者が、平成24年は全国で156の救急病院に搬送され、そのうち約3割にあたる46病院は、年間50件以上に上ったという(読売新聞 平成26年2月11日、朝刊)。これは昨年11月、全国の救命救急センターと日本救急医学会の救急科専門医指定施設498病院にアンケートをとって調査した結果である。うつ病でよく使われる三環系抗うつ薬の大量服用で、1年間に5人が死亡し、52人が不整脈、23人に痙攣など、生命に係る症状が見られたという。
 精神科医療のこうした漫然とした多剤大量投与に対して、昨年10月、厚生労働科学研究班と日本睡眠学会が合同で、「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」を発表し、減薬・休薬への道を一歩踏み出した。
 平成26年度診療報酬改定では、向精神薬の使用に大きな見直しが図られた。精神科薬の問題は明らかに医師側にあり、今回の診療報酬改定などを機に、向精神薬の適切な使用が決められ、精神科医療に対する国民の不安と不信が払拭されることを願いたい。
NH
   向精神薬抗うつ薬 | 睡眠薬 | 抗不安薬 | 多剤大量投与
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