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サルコぺニアとフレイル ― 虚弱に代わる新しい概念
No114r (2014/05/30)
 歳を取ると筋肉が衰え力が出なくなるが病気ではない、という事実は自然現象として受け入れられてきた。しかし、1989年にRosenberg IHが「サルコぺニア」という高齢期の筋肉量・筋力の減少に対する症状名を提案した。ギリシャ語の筋肉を意味するサルコと喪失を意味するぺニアからなる造語で「筋減弱症」と訳される。年齢(老齢)以外の原因がないものを原発性、廃用・疾病・栄養が原因のものは二次性に分類している。診断基準は、@筋肉量の減少、A筋力(握力など)の低下、B身体機能(歩行速度など)の低下、の三点で、高齢者のふらつき、転倒・骨折、機能障害、要介護化とフレイルに密接に関連し、老年医学、介護学、リハビリ学、栄養学、運動生理学などが注目して研究が進んだ。
 一方、高齢期の機能低下徴候を指すfrailtyの訳語「虚弱」が、高齢者がたどる機能減退期を適切に表現していないこと、また老年医学におけるfrailtyの重要性を2001年に指摘したFried L Pらによる診断基準と知見の集積に対応して、2014年5月に「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」が発表された。同学会では、フレイルを「高齢期に生理的予備能が低下することでストレスに対する脆弱性が亢進し、生活機能障害、要介護状態、死亡などの転帰に陥りやすい状態で、筋力の低下により動作の俊敏性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念」と定義した。すなわちサルコぺニアを含むより広義の高齢期機能減退状態を意味する。
 Fried LPらは、診断基準として、@体重減少、A主観的活力低下、B握力低下、C歩行速度の低下、D活動度の低下、を挙げてこのうち3項目があればフレイルであると提唱している。このように、サルコぺニアもフレイルも、高齢者が認知症や転倒・疾病による機能障害に陥り介護が必要になる「直前の段階と正常との中間の」心身状態を示す新しい疾病概念である。
 サルコぺニアの予防対策は、本来多様性に満ちた老化状態・病態の認知を前提に、適切な栄養と運動を行うこと(介入)である。栄養は、良質なタンパク質・アミノ酸(ロイシンなどの必須アミノ酸)、ビタミンD、カルシウム、等の摂取、運動は週2,3回のレジスタンス運動(重りや機械で負荷をかけて筋力や持久力を強化する運動)で、栄養・サプリメントのみや運動のみでは効果が不明、両者の併用が有効とされている。研究は未だ十分とは言えないが、安易に自己診断することなく専門医の診断と栄養やリハビリの専門家の指導を得て努力することをお勧めしたい。
RT
サルコぺニア | フレイル | 介護予防 | 筋減弱症 | 虚弱
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