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認知症ケアの新しい方法 −ユマニチュード−
No130r (2016/04/01)
 日本人の平均寿命は,男性80.50歳,女性86.53歳(2014年度,厚生労働省)であり,65歳以上の方々が全人口の26%を占める.今後もこの高齢化率は加速すると予測されている.それに伴って認知症が増加し,その患者数は2012年時点で約460万人であり,2025年には700万人と推定されている(2015年,厚生労働省)。
 認知症の方々のケアは困難を来す.そのため病院や施設ではチューブ類の自己抜去や転倒転落などのアクシデントを恐れ,過剰な身体抑制を強い,その結果,認知症高齢者の身体機能や精神機能が著しく低下する状況が発生することも多い.このような現状の中,注目されている方法が「ユマニチュード」である。
 ユマニチュード(Humanitude)とは,知覚・感情・言語による包括的コミュニケーションに基づいたケアの技法である.この技法は「人とは何か」「ケアをする人とは何か」を問う哲学と,それに基づく150の実践技術から成り立っている.開発したイブ・ジネストとロゼット・マスコッティは体育学の専門家である.フランス政府から医療施設で働くスタッフの腰痛予防対策教育と患者ケアの支援を要請され,「生きている者は動く.動く者は生きる」という思想のもと,寝たきりや障害のある人たちへのケアの改革に取り組んだ.さまざまな機能が低下して他者に依存しなければならない状況になったとしても,最期の日まで尊厳を持って暮らし,“人間らしい存在”で在り続ける状況を「ユマニチュード」と命名した。
 人間は誕生した後,周囲から触れられ,見つめられたり,言葉をかけられて育つ.そして2本足で立つことによって,人としての尊厳を獲得し,自分が人間的存在であると認識をすることができる.ケアをする人も,ケアを必要な赤ちゃんに依存されることによって自分と赤ちゃんとの間に愛情と尊厳と信頼を築いていく.脆弱な状態にある高齢者も,他者との関係を考えると赤ちゃんと同じ状況といえる.ユマニチュードはこの「人と人との関係性」―わたしとその人との絆―に着目したケアの技法である。
 認知症などの病気や障害を得ることによって,人間の尊厳は容易に崩されてしまう.そこで再び人間の尊厳を取り戻すために,ユマニチュードは「見る」「話す」「触れる」「立つ」という4つの援助を柱としている.「見る」とは,ただ見るのではなく,相手の視線をつかみに行く,「話す」ときには,自分が行っているケアの様子を言葉にする, 「触れる」方法は,広い面積で,ゆっくりと,優しく,40秒「立つ」ことができるなら,寝たきりは防げる,など一見常識としか思えない技術であるが,著者らは,「常識を徹底させると革命になる」と述べている。
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認知症ケア | ユマニチュード | 包括的コミュニケーション | 人間の尊厳 | 絆
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