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高齢者における低栄養
No131r (2016/04/29)
 高齢者は仕事がなくなり、体力が落ち、気力も低下する。他者との交流も減り、社会とのつながりも希薄になる。その上、配偶者、友人、近隣の人たちの喪失に遭遇して孤独やうつになり、QOLも低下する。社会的活動性の低下した高齢者では低栄養になる危険性が高い。特に男性の独居高齢者や認知機能低下の高齢者では栄養の偏りに陥りやすい。また高齢者では味覚、嗅覚も低下して食欲もなくなり、歯の欠損や咬合の劣化などもあって食事の摂取に支障をきたすため栄養が十分でなくなる。
 高齢者の低栄養の割合は居住場所によって異なり、地域居住高齢者では5.8%、養護施設では13.8%、病院では38.7%、リハビリテーション施設では50.5%であったという(Am..Geriatr Soc. 2010 ).。わが国では、@6か月で2〜3Kg以上の体重減少があり、ABMI 18.4以下の両方に該当する高齢者を低栄養と評価しているが、平成25年の厚労省調査によると、調査対象者261万人のうち、5.3%(約14万人)が低栄養であった。
 高齢者低栄養の要因としては、@社会的要因:独居、介護不足、貧困など、A精神的・心理的要因:うつ、孤独感、誤嚥などへの不安など、B生理的要因:味覚・嗅覚の低下、食欲不振など、C疾病要因:各種疾患、特に消化器系疾患、各種がん、疼痛性疾患など、Dその他など、多岐に亘る。
 高齢者が疾患に罹患した場合、栄養状態が予後に与える影響は大きい。75歳以上の入院高齢者414人を栄養良好群、低栄養のリスク群、低栄養群の3群に分け、入院当初の栄養状態とその生命予後について3年にわたって追跡した報告によると、低栄養群の予後は継時的に悪化していくが、低栄養リスク群も栄養良好群に比べて生命予後は有意に悪化している(Am. J Clin. Nutr.2005)。 ここことは栄養状態の早期評価、早期治療が重要であることを物語っている。その他、低栄養のもたらすマイナスの結果は、感染罹患率の上昇、褥瘡の発生、入院期間の延長、医療費の増加などが報告されている。
 高齢者では常に栄養状態を評価することが求められる。高齢者では低栄養に陥ってからの対応では後手に回ることが多く、早い段階での対策を立てることが健康寿命延伸にとって重要となる。地方自治体が行っている後期高齢者健康診査の血液検査で、血清総蛋白濃度(TP)が5.9g/dl以下、アルブミン3.5g/dl以下で食事摂取量が少なく、食事内容に偏りのある高齢者は、「かかりつけ医」に相談することを薦めたい。
NH

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