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新しいがんの免疫療法「免疫チェックポイント阻害剤」
No132r (2016/05/20)
 現在、一般に行われているがん治療は、手術、抗がん剤、放射線治療で、総称して三大がん治療といわれている。これに加えて、近年、第四のがん治療として注目されていのが免疫療法である。
 私たちの体には、ウイルスや細菌が体内に侵入したり、がんが発生したりすると、免疫細胞がそれらを異物と認識して排除する免疫システムが備わっている。この免疫細胞には、正常細胞まで過剰に攻撃しないようにブレーキがついている。 これまでのがん免疫療法は、免疫細胞の能力を高め、がんの治療に活かそうとする、いわばアクセルを踏むような治療法である。ところが新しく開発されたがん免疫療法である「免疫チェックポイント阻害剤」は、免疫細胞の攻撃を受けたがん細胞が免疫細胞のブレーキを押すことで攻撃をやめさせて増殖するのを、ブレーキにカバーをして押せないようにすることによってがんに効く。
 「免疫チェックポイント阻害剤」の代表といえる「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)は、2014年9月条件付きであるが承認され、がん治療に使用されている。悪性度が高く治りにくいがんであるメラノーマ(悪性黒色腫)は、手術以外の有効な治療法がなかったが、免疫チェックポイント阻害剤の登場で生存率を改善しつつある。15年12月には日本人の肺がんの85%を占める非小細胞肺がんで、切除できない進行・再発がんの患者に使えるようになった。2〜3割の患者でがん細胞が縮小したり、消失したりしている。
 副作用としては、免疫を強めることで起きるかゆみ、下痢、肝機能障害、甲状腺機能障害、間質性肺炎などの他に、正常細胞を攻撃する自己免疫に関係すると考えられる重症筋無力症、糖尿病、腎炎などがあり、誰にも効く安全な“夢の新薬”ではない。
 問題は、法外に高い薬剤費である。体重60キロの患者が1年間、オプジーボを使うと、年3500万円かかる。患者の平均的な負担は、高額療養費制度があるため、月8万円程度で済む。残る金額は患者が加入する医療保険と公費で賄われることになる。  「人の命は地球より重い」という考えもあるが、医療費の増加が続けば、世界に誇る日本の国民皆保険制度を支える財源が不足し、制度自体が揺らぎかねない。一つの高額な薬が生んだ波紋は、患者も含めた日本社会ががん医療に何を求め、どこまで負担するかという重い課題を突きつけている。
TI

がん治療免疫療法 | 免疫チェックポイント阻害剤 | メラノーマ(悪性黒色腫) | 非小細胞肺がん
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