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幹細胞とは −造血幹細胞移植を例として
No133r (2016/06/17)
 ノーベル賞を受賞した山中伸弥先生のiPS細胞(induced pluripotent stem cells)のお話で、多くの人々は幹細胞の意味をある程度理解していると思うが、山中先生のstem cell(幹細胞)のpluripotent (多くの可能性) は人体の全ての細胞になり得るかも知れないという意味で、精子と結合した卵子と殆ど同様と考えてもよいのかも知れない。生殖時の有精卵子は人体すべての細胞、組織及び臓器、そしてそれを統合した個体まで作れる可能性を持っている。しかし人工操作による幹細胞がそれらをバランスよく統合した人間そのものを造れるとしたら、人間の個性はどうなるのかと考えると恐ろしい気もする。組織単位まで或いは臓器の一部までと限界を決めて再生医療の研究を進める必要があろう。すなわち部品止まりである。人間の心まで立ち入るようなことが起きてはてはいけないのではないか。
 造血幹細胞は血液の中を生理的に流れる細胞、即ち赤血球、白血球(顆粒球やリンパ球や単球)そして血小板となり得る、限定された部分の幹細胞である。即ち、根元に直接繋がる本幹ではなく多くの分枝のうちの太い1本の幹であり、この幹から出る枝は血液細胞にしか成れない。最重要なことは、血液細胞は実質細胞であり、血液の液性成分が間質であり、肝臓のような充実性の臓器ではない。肝臓の実質細胞(それぞれの臓器の固有のもの)は肝細胞であり、間質は血管、結合組織、末梢神経、リンパ管などである。
 この造血幹細胞移植は、白血病(多くの種類あり)、悪性リンパ腫(多くの種類あり)、骨髄異形成など血液細胞の悪性腫瘍及び将来悪性になる可能性の高い血液疾患の根本的な治療に用いられる。血液細胞を造る中心は骨髄であるので骨髄移植、臍帯血移植(赤ちゃんの臍帯血管内の血液にはかなり多くの造血幹細胞が含まれている)、更に赤ちゃんだけでなく、成長した人間の末梢血にも少数かも知れないがこの幹細胞が流れているのでそれを利用する,等々が発見され、利用されており、かなりの白血病患者が実際に救われている。
 移植なので、移植後の拒絶反応である移植片対宿主病(GVHD, Graft Versus Host Disease)を避けるためには自家移植が理論的には望ましいが、実際には実施困難である。ヒト白血球抗原(HLA)を調べ記録し、移植片を提供するための臍帯血バンク、骨髄バンクが設置されており、より適合したDonorからの移植片が選ばれている。また、拒絶反応の予防及びそれが起こった場合にもそれを弱める免疫抑制剤も進歩しつつある。
IS

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