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先制医療(Preemptive Medicine)
No134r (2016/08/12)
 先制医療は2015年京都で開催された第29回日本医学会総会の会頭講演の中で井村裕夫名誉教授が紹介された概念で、疾患が発病する前にそれを起こす事が予測されるものに対して先制攻撃をかけるという考えである。予防医学は集団を対象とした疫学研究を基礎に集団の予防であるのに対して、一人ひとりの持っているリスク因子について各種のバイオマーカーを使って、個々の人で進行している病的状態を予測し、疾患が発症する前にその人に合った対策を立てるという手法が先制医療である。先制医療は「個の予防」になり、その人の特徴に応じて疾患を予測し、集中的な介入ができれば、より効果的な予防医学が実現することになる。
 先制医療が期待される疾患領域としてはがん、アルツハイマー病、パーキンソン病、糖尿病などがある。
 がん領域では胃がんに関してピロリ菌の除去により予防できることが明らかになり、C型肝炎を治療することによる肝がんの予防が行われ、遺伝子解析により、家族性に乳がんになる可能性の高い遺伝子を持つ人が予防的に乳房切断術を受けたことが話題(米国女優A.ジョリー)になったこともある。
 妊娠中の母親が低栄養状態にあると生まれた子供が成長してから精神障害や糖尿病になる可能性が高いことがデータで示され、それに対して積極的な予防対策を講じることが考えられる。
 脳ドッグで発見される未破裂脳動脈瘤の治療も先制医療に相当する。脳動脈瘤は破裂するとくも膜下出血を生じ、命取りとなるか重度の障害を残す疾患である。その治療法も開頭術によらず血管内操作によるコイル塞栓術も普及して安全に実施できるようになった。
 このように広い分野で疾患の発生機序が解明されることにより、それが発生しないようにあらかじめ予防することがこれからの医療で大切になる。しかし、異常が発見されたときに何時どのような治療をするか解決しなければならない問題もある。
SF

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