HOME 新しい診療理念 backnumber 新しい診療理念 No136r

新しい診療理念バックナンバー

価値に基づく診療 (Value-Based Practice VBP)
No136r (2016/12/02)
 EBM(Evidence-Based Medicine)は、@疑問の定式化、A問題についての情報収集、B得られた情報の批判的吟味、C情報の患者への適用、D一連の流れの評価という5つのステップによって構成される一連の意思決定様式である。
 科学的根拠と個別の患者の価値観を統合して、あくまでも個別の患者に最善の医療を提供するというのがEBMであるが、患者が意思決定するプロセスで、医療者は常に情報の提供者であり、患者はその情報を受け取り、解釈する者として現実には位置付けられることが多い。患者は医療従事者からの提案を承諾、選択、拒否する、もしくは「お任せします」という行為しか行うことを許されないような状況にあるのではないかという尾藤誠司氏の意見に筆者は共感するものである(日本内科学会雑誌.103(2014) 2829-2834)。
 こうした背景をもとに、EBMのステップCを補完するものとして英国のWarwick大学のグループは、患者やその家族と医療者がもつ「価値」に力点を置いた「価値に基づく診療」(Value-Based Practice VBP)を提唱している。
 VBPには「二本の足の原則」という考え方がある。1本は医学的根拠であり、もう1本は患者自身の選好も含めた、患者を取り巻く様々な事情を根拠とするべきであるという原則である。
 もう一つの原則は「軋む車輪の原則」である。異なる人間が同じ目的に向かって進んでいくとき、少なからずそこには軋轢が生じるものだということを前提としながら対話を進めていくことを、「軋む車輪」という比喩を用いている。
 注意すべき点は、VBPは患者の価値一辺倒ではなく、医療者自身の価値も重視するとともに、エビデンスも重要としていることである。要するに、よりバランスの取れた意思決定に進むことが望まれるということだと考えられる。
 VBPが患者の価値を重視するものであるからには、患者が持っている価値を医療者が聞き出し理解することが前提となる。診療に当たっては、常に対話が求められる。さらに言えば、患者との間に信頼関係が醸成されていてこそ、患者は本音を開示する。
 電子カルテになってから、一層、軽視されている患者の人格を尊重する「医療面接」と身体診察によるスキンシップの重要性を改めて強調したい
TI

     価値に基づく診療(VBP) | EBM | 二本の足の原則 | 軋む車輪の原則 | 医療面接
関連記事サイト内検索  :記事の最後のイニシャルをクリックすると、同じ著者の記事を検索できます。
       :キーワードのリンクをクリックすると関連記事を検索できます。