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廃用症候群
No144r (2017/08/15)
 廃用症候群disuse syndromeとは過度の安静や活動性の低下によって身体に生じる様々な症状を指す。1964年、Hirschberg GCによって初めて報告された。disuseとは「不使用」のことである。過度の安静によって、組織・器官などが使われないでいると機能低下が起こるのである。特に高齢になると、体力の衰えと筋力の低下により体を動かすのが億劫になり、動かさずに休んでいる時間が長くなると様々な機能障害が生じる。また高齢者は多病のため、安静を余儀なくされていることが多い。過度の不活動により下記のような機能障害、症状が生じる。

1.運動機能障害:骨格筋萎縮、筋力低下、骨萎縮、骨粗鬆症、関節拘縮。
2.循環機能障害:心拍出量低下、起立性低血圧、深部静脈血栓症、肺塞栓症。
3.呼吸機能障害:肺換気障害、誤嚥性肺炎。
4.消化機能障害:食欲不振、嘔気・嘔吐、腹部膨満、便秘、栄養障害。
5.精神障害:不安、抑うつ、睡眠障害、認知症、倦怠感。

 上記症状は重なり合って発症し、慢性化すると肺炎、静脈血栓症、褥瘡などを併発し、遂には老衰となって死に至る。日常よく見られるのは、脳梗塞後遺症による片麻痺や、転倒・骨折後のベット臥床で不活動となる場合である。従って廃用症候群では予防が大切で、急性期リハビリでは早期離床、早期歩行が推奨される。一方、基礎疾患があって、止むを得ず不活動の生活をしている場合は、予防として許される範囲の運動、歩行、適切な栄養摂取、疼痛の除去、精神の発揚が大切である。
 廃用症候群の明確な診断基準はない。厚生労働省でも廃用症候群の定義を発表していない。診断は多職種からの診療情報を基に総合的に行っているのが現状である。すなわち、@身体機能 A栄養状態 B摂食・嚥下機能 CADL(日常生活動作)を中心として、更にD認知機能 E意識レベルなどを参考にして総合的に診断することが望ましいとされている。
 廃用症候群の治療は、先ず基礎疾患の治療が重要である。しかし高齢で長い間慢性疾患に罹患している場合、治癒は困難である。また疾患によっては不活動から脱して運動することが難しいことも少なくない。どこまで日常生活が出来るかが鍵となる。栄養管理も本症の治療として重要である。栄養低下は本症の増悪因子である。高齢者人口が増加し、疾病構造が複雑化していく今日、廃用症候群の対策は国の医療費・介護費に絡んだ重要課題の一つである。
NH

廃用症候群 | 不活動 | 機能障害栄養低下ADL
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