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新しい診療理念バックナンバー

高齢者のサルコペニアと低栄養
No145r (2017/11/15)
 サルコペニア(筋肉減少症、バックナンバー 114r参照)は、一般の人ばかりでなく医療・介護職者の理解も遅れていたが、最近の研究データーの集積や専門誌・テレビ紹介などにより徐々に認知度が高まり、「高齢期低栄養」とともに健康寿命及び要介護度や各種疾患の生命予後に大きくかかわるものとして改めて注目されている。
 サルコペニアは、1989年にRosenbergが提唱し2016 年版疾病分類(ICD10)に搭載された。老齢期のフレイル(虚弱、同上 114r)の中核をなす病態で、欧州やアジアの研究会や日本肝臓学会並びに日本サルコペニア・フレイル学会が診断基準や診療ガイドラインを提案している。
 加齢以外に明らかな原因がないものを「一次性サルコペニア」、活動度の低下(寝たきり、廃用、失調など)によるもの、急性・慢性の疾患(炎症、悪性腫瘍、臓器不全、など)によるもの、栄養の低下(吸収不良、消化管疾患、薬剤による食欲不振、エネルギー・タンパク質摂取不足など)によるものは「二次性サルコペニア」と分類している。
 所見は、骨格筋肉量や体重の低下、筋力(握力など)や活動能力(歩行速度など)の低下、精神的・心理的・社会的活動度の低下、などである。アジアの研究グループ提案の診断基準では、先ず握力(男性では26s以下、女性では18s以下の有無)と歩行速度(0.8m/秒以下,8mを10秒以内で歩けるか否か)を測定して両方とも該当すればサルコペニアの可能性があるという。
 低栄養は、サルコペニア・フレイルや慢性疾患末期の前駆所見であり、いろいろな原因で生じる。疾患によるもの(急性・慢性疾患による悪液質、炎症、サルコペニア肥満など)、薬剤や長期ベッド上安静などいわゆる医原性のもの、飢餓や拒食・偏食など食習慣によるエネルギー・タンパク質摂取不足、などがある。
 低栄養とサルコペニアの予防・治療法は、栄養改善と運動(レジスタンス運動又は有酸素運動)が基本である。病態や年齢、受療環境(専門職の在否、医師や院内の栄養支援活動)によって異なる。近年は、トクホ・健康食品の情報や宣伝が氾濫しているため、かなりの知識人でも予防法や治療法がかく乱されている感がある。それ故、高齢者でも慢性疾患患者でも、医師や栄養専門職の指導を受けながら、必須アミノ酸に富んだ肉類などのタンパク質・炭水化物・ミネラル・野菜などバランスの良い食品の摂取が必須である。運動は、散歩や速歩など軽い運動を持続することである。
 70歳以上の高齢期においては、痩せるのが当たり前と思わないで、メタボ対策から低栄養防止への意識の転換、あるいは食習慣や薬品・栄養剤嗜癖や運動法などを見直す契機としたい。
RT

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