HOME 健康相談Q&A 003q胃瘻中止時期

第9回健康相談セミナー 質疑応答より

(平成25年11月2日)
question1. 胃瘻を中止する時機について教えて下さい。
(50歳 女性 主婦)

                               
amswer1.  胃瘻とは胃壁に作られた穴(瘻孔)のことであり、@胃の中の内容物を外へ排出する場合とA食物を経口的に摂取出来ないとき水分や栄養を直接胃に注入して栄養を補給する場合の二つがある。いずれも胃に穴を開けてチューブを通すため胃瘻増設術を行う。通常、胃瘻というと後者の場合を指す。後者は人工的水分・栄養補給法(AHN artificial hydration and nutrition)と言い、本日の質問はこのAHNを目的とした胃瘻をいつ止められるかという質問である。
 先ず胃瘻の適用であるが、病気や外傷による消化器系(口腔、咽頭、食道)の機能障害のために、あるいは脳・神経系の障害により食物や水などの経口摂取が不可能な場合、胃瘻による人工栄養の供給が必要となり、十分な栄養を摂取出来れば患者の延命が可能となる。
しかし以下のような場合は胃瘻は適用外となる。
@死期の近い老衰期、終末期重症、意識障害のある場合。
A患者本人あるいは家族が胃瘻増設による人工栄養や水分補給による延命を望
 まないか、拒否する場合。
B胃・腸などの消化器系に病変があり、人工栄養を消化・吸収することが不可能な
 場合。
C内視鏡が使用できない場合。
D出血傾向が強い場合。
E妊娠中
F胃前壁を腹壁に近接出来ない場合。
G著しい肥満で、腹壁から胃内に胃瘻チューブが届かない場合。

 問題となるのは一旦始めた(導入した)胃瘻をいつまで患者に装着しておくかである。いつまで栄養補給を継続するかということである。つまり胃瘻中止の時期の判断が難しい。食事が経口的に摂取できるようになれば、当然中止できる。しかし全身状態が悪く、もはや延命の可能性が全くない患者、とくに意識がない場合、植物状態になってただ生かしておくことが果たして患者の益になるのかというときに胃瘻継続の是非が問題となる。
 この点について日本老年医学会では「高齢者ケアの意志決定プロセスに関するガイドライン」を策定し、AHNの導入と中止について学会としての見解を発表している(平成24年6月24日)。それによると、先ずAHN導入に関する意思決定の注意点を挙げている。導入した後の継続・中止についてはAHNの効果と患者の人生にとって真に患者の益になっているかどうかを注意深く評価して、複数の人たち(患者、家族、医療・介護担当者など)によってAHNの継続・中止の是非を検討し決定するよう勧めている。
 このことは胃瘻に限らず、人工呼吸装置を含めて、植物状態患者の延命治療をいつまで行うかということの問題として共通しており、今後、国民的な議論と同意が必要である。当センターでもこの問題は第4回市民公開シンポジウムで「尊厳死を考える」と題して論じたことがある(平成18年10月14日)。
参考:医療教育情報センター編:尊厳死を考える. 中央法規出版
(NH)
No003q 2013/11/08