HOME 医療ニュース No290n

医療ニュース

見て、話して、触れる認知症介護の『ユマニチュード』
―病気中心の冷たい現代医療にも求められている―
No291n (2019/06/15)
 ユマニチュードは、フランス人のイブ・ジネストとロゼット・マレスコッティによって1979年に開発された認知症ケアの技術である。目線や言葉、身振りなどを用いた包括的なコミュニケーション法を軸としているが、具体的な手法によって体系化されている。
 日本への導入は、2012年に両氏が国立病院機構東京医療センターを訪問し、日本人患者へのケアを行ったのが最初である。その後、NHKクローズアップ現代で紹介されたこともあり(『ユマニチュード 認知症ケア最前線』 角川新書 2014)急速にひろがり、最近は看護の分野でも取り入れられている(看護管理29巻2号2019年)。
 ユマニチュード(Humanitude)とは、フランス語で「人間らしさ」を意味する言葉で、 「ケアをする人中心」でもなく「ケアされる人中心」でもない、両者の絆を中心にとらえてケアを行う考え方である。
 ユマニチュードは4つの動作(見る・話す・触れる・立つ)を基本としている。見るときは、できるだけ長く瞳と瞳を合わせることで愛情が伝わる。話すときは、ゆっくりと穏やかに話すように心がける。触れるときは母親が赤ちゃんを触るときのように、優しく包み込むように触れる。立つように仕向けることで寝たきりにしない効果が期待される。
 ユマニチュードによるケアはフランスで実際に高い効果を上げている。認知症を発症すると、言葉や態度が攻撃的になることが少なくないが、ユマニチュードによってそのような症状がおさまるケースが多い。介護スタッフにとっても時間がかかり負担が増えるようにみえるが、実際は介護しやすくなる。スタッフのストレスが軽減し離職率が低下するという調査結果が報告されている。
 ユマニチュードは、コミュニケーションの一つの技法ということができる。コミュニケーションの語源は「コミュニス(共有する)」である。人の抱える問題に関わる人間が一緒になって解決をはかることは介護に限らず、あらゆる場面で求められる。
 医学医療の進歩自体は素晴らしいが、医療機器やコンピュータの導入によって、“手当て”は死語に近い。医療費の高騰を抑えるために導入されたDPC(包括支払い制度)は正に病気中心そのものであり、“冷たい医療”が問題になっている。今こそ、医療の分野にもユマニチュードの精神である“人間らしさ”を復活すべきであると考える。
TI